西南日本愛媛県四阪島梶島に産する白亜紀深成岩のジルコンU-Pb年代

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  • Zircon U-Pb ages of Cretaceous igneous rocks distributed in Kajishima, Shisakajima, Ehime Prefecture, southwest Japan.
  • 「日本地質学会優秀ポスター賞」受賞

抄録

<p>1. はじめに 近年、大陸地殻の成長を解明するための鍵として火山弧でのマグマの異常発生期である“フレアアップ”が注目されている。西南日本内帯に分布する花崗岩類をはじめとした珪長質岩類は白亜紀フレアアップによって形成され、近年の同位体岩石学をはじめとした研究から、苦鉄質下部地殻の部分溶融によるものであると考えられている(例えば, Nakajima 2004)。しかしながら、そのメカニズムについては未だ明らかにされておらず、苦鉄質岩および珪長質岩類の産状と年代学データを紐づけた議論が必要不可欠である。</p><p> 四阪島梶島は愛媛県北東部に位置する南北800 m、東西500mの小島であり、全島が斑れい岩類により構成され、岩脈状に珪長質岩が分布する。堀内(1985)は当地域に分布する斑れい岩類について詳細な記載岩石学研究を行い、鉱物組成の特徴から当地域の斑れい岩類が同一のマグマから形成されたことを示唆した。一方で、Kagami et al. (1985; 2000)は梶島の斑れい岩類を含む西南日本白亜紀深成岩類の同位体岩石学研究から苦鉄質岩と珪長質岩の成因的関連性を示唆した。Okano et al. (2000)は梶島の斑れい岩についてSr-Nd同位体組成分析を行い、101.9±3.2 MaのRb-Sr鉱物アイソクロン年代と、220±46 MaのSm-Nd鉱物アイソクロン年代を報告している。しかしながら、珪長質岩についての研究は極めて少なく、堀内(1985)で僅かに触れられた岩石記載研究に限られる。そこで本研究では、梶島に分布する深成岩類について新たに岩石記載とジルコンU-Pb年代測定を行い、その特徴を明らかにするとともに、西南日本に分布する白亜紀深成岩類との比較を行なった。</p><p>2. 岩石記載 梶島の苦鉄質岩類は、野外産状および記載岩石学的特徴から、含かんらん石優白質輝石角閃石ノーライト、含角閃石トロクトライト、優白質輝石角閃石斑れいノーライト、優白質輝石角閃石斑れい岩、含かんらん石優白質角閃石斑れい岩、苦鉄質岩脈に大別できる。珪長質岩は野外産状により片状なものと塊状なものの2岩相に分けることができる。片状な岩相は、異なる斑れい岩相どうしの境界域に産し、岩脈中心部では岩脈の貫入方向と調和的な変形構造を示すが、周縁部では塊状に変化する。鏡下ではカリ長石および斜長石のポーフィロクラストとサブグレイン化した石英・斜長石を観察でき、黒雲母は岩脈の示す変形構造に調和的に配列する。塊状な岩相は斑れい岩相内部に産し、石英、斜長石、および黒雲母からなり、しばしば他形のカリ長石を含む。このカリ長石は鏡下で融食縁を示す斜長石、球状の石英・自形〜半自形の黒雲母をポイキリティックに内包する。</p><p>3. ジルコンU-Pb年代 優白質輝石角閃石斑れいノーライト、含かんらん石優白質角閃石斑れい岩、珪長質岩の片状岩相、塊状岩相の試料からジルコンを分離し、U-Pb年代測定を行った。その結果、優白質輝石角閃石斑れいノーライトから約92 Ma、含かんらん石優白質角閃石斑れい岩から約91 Ma、珪長質岩の片状岩相から約84 Maと塊状岩相から約91 Maの年代が得られた。</p><p>4. 議論 斑れい岩類は92〜91 MaのジルコンU-Pb年代を示し、約91 Maの年代値を示す珪長質岩塊状岩相と同時期に形成されたと考えられることから、両者の成因的関連性が強く示唆される。一方で、珪長質岩からは約91 Maと約84 Maの岩相によって異なる年代値が得られており、この地域に少なくとも2つの異なる珪長質岩形成時期があったことを示している。珪長質岩のジルコンU-Pb年代値について、約91 Maを示す塊状岩相は、近傍の高縄半島に分布する花崗岩類の年代値(99~89 Ma; Shimooka et al., 2019)に類似するが、約84 Maを示す片状岩相はこれらに類似しない。しかしながら、本研究で得られたジルコンU-Pb年代は西南日本に分布する白亜紀深成岩類の年代分布範囲に収まることから、梶島の深成岩類は西南日本内帯の白亜紀深成岩類を代表するものと考えることができ、苦鉄質下部地殻での珪長質マグマ形成過程を記録した地質体と捉えることができる。</p><p></p><p>引用文献 : Kagami et al. (1985) Geochem. J. 19, 237-243. Kagami et al. (2000) Island Arc 9, 3-20. 堀内(1985) 岩石鉱物鉱床学会誌, 80, 104-112. Nakajima (2004) Transactions of the Royal Society of Edinburgh: Earth Sciences, 95, 249-263. Okano et al. (2000) Island Arc, 9, 21-36. Shimooka et al. (2019) JMPS, 114, 284-289.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295658310517248
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_341
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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