山口県南部、大津島に産する変成岩類の変成作用

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  • The metamorphism of metamorphic rocks from Otsu-jima Island, South of Yamaguchi Prefecture

抄録

<p>1、地質概要 山口県南部には、三畳紀高圧型変成岩類(周防帯)、白亜紀領家変成深成複合岩体、白亜紀火山岩類が分布する。大津島は周防帯と領家帯の境界部に位置する。大津島に産する変成岩類は主に泥質片岩から構成され、珪質片岩や少量の石灰珪質片岩と変玄武岩を伴う。片理面は東西方向で北南に傾斜し、褶曲構造が認められる。また、南部には走向とほぼ平行で、20-30 ˚北傾斜の衝上断層が発達する。島の北東部には白亜紀の花崗岩が貫入している。</p><p>2、岩石記載 野外の産状から3ステージの変形作用が想定される。ステージ1:原岩の層理面とそれに平行な片理面の形成(S1面の形成)、ステージ2:波長数mの閉じた褶曲構造の形成と軸面劈開(S2面の形成)、ステージ3:衝上断層の形成(S3面の形成)。 泥質岩の鉱物組み合わせは以下の通り。ステージ1:黒雲母(Bt)、白雲母(Ms)、斜長石(Pl)、石英(Qtz)を含み、低変成度では緑泥石(Chl)、高変成度では紅柱石(And),珪線石(Sil),ざくろ石(Grt),菫青石(Crd)、カリ長石(Kfs)とコランダム(Crn)を含む。ステージ2では褶曲軸面に沿ってMsとBtが再結晶し、ステージ3は衝上断層沿いにのみ発達し、BtがChlに置換される。</p><p>3、変成分帯 ステージ1は最高変成時の組み合わせを示し、鏡下組織と鉱物組み合わせなどからBt zone、And-Crd zoneとSil zoneに区分できる。</p><p>Bt zone:  Bt+Ms±Chl</p><p>And-Crd zone:  Bt+Crd+And+Kfs; Bt+Ms+Grt±Kfs; Bt+Crd+Ms+Kfs±Chl; Bt+And+Ms</p><p>Sil zone:  Bt+Crn+Crd+Sil+Kfs; Bt+Grt+Kfs+Crd</p><p> 各帯は、北から南へSil zone、And-Crd zoneそしてもっとも低変成度のBt zoneが分布し、向斜軸を挟んで再びAnd-Crd zone、Sil zoneが分布する。そして、ステージ3の衝上断層を挟んでAnd-Crd zoneの変成岩類が最南部に分布する。</p><p>4、議論 (1)変成履歴:And-Crd zoneでは、Andの中にMsとQtzを包有されることから以下の反応が推定される:Ms+Qtz =And+Kfs+H2O。また、Crd中にはChlやMsが包有されることから、Chl+Ms+Qtz =Crd+Bt+H2Oの反応が想定される。これらは昇温期の変成作用に相当する。</p><p> Sil zoneでは、面構造を形成するCrdがBtを含むことからSil+Bt+Qtz=Crd+Kfs+H2Oの反応が考えられる。Sil zoneはコランダム(Crn)を含むが、CrnはしばしばMsに置換される。これは、Crn+Kfs+H2O = Msが温度低下によって進行したことを示す。すなわち、大津島の変成岩は時計回りのP-T Pathを示すと推察される。</p><p>(2)大津島変成岩の原岩:大津島の砕屑性ジルコンの最も若いU–Pb 年代年代は249.2±1.3Maで、原岩の堆積年代はトリアス期であると考えられ、周防帯に相当し、その後、高温低圧型の変成作用を受けたと考えられる。先行研究による砕屑性ジルコン年代と変成作用の類似性から、田川北東地域約250Ma(柚原ほか、2021)、久留米地域260〜250Ma(Tsutsumi et al.,2003)、そして大牟田地域約250Ma(Miyazaki et al.,2017)も大津島と同じ地質体に属すると推察される。</p><p>参考文献</p><p>Tsutsumi, Y., Yokoyama, K., Terada, K. and Sano, Y., 2003, SHRIMP U–Pb dating of detrital zircons in metamorphic rocks from northern Kyushu, western Japan. J. Mineral.Petrol. Sci., 98, 181–193.</p><p>Miyazaki, K., Ikeda, T., Matsuura, H., Danhara, T., Iwano, H.and Hirata, T., 2017, A high-T metamorphic complex derived from the high-P Suo metamorphic complex in the Omuta district, northern Kyusyu, southwest Japan. Isl. Arc, 26, e12208, doi: 10.1111/iar.12208.</p><p>柚原 雅樹, 清浦 海里, 日髙 万莉亜, 外田 智千, 早坂 康隆, 北部九州東部に分布する田川変成岩類の変成作用, 地質学雑誌, 2021, 127 巻, 8 号, p. 447-459</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295658310602752
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2022.0_303
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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