<資料紹介>『行者大要鈔』攷

書誌事項

タイトル別名
  • <Research Materials>A Study of the Gyōja taiyōshō
  • 『行者大要鈔』攷
  • 『 ギョウジャ タイヨウショウ 』 コウ

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説明

南都で、三論・密教・法相等に造詣を深めた明遍(1142~1224)は、法然(1133~1212)が説く専修念仏の教えに救済の道を見出したと言われる。各種法然伝や、法然の流れを汲む諸師の著作等に示された明遍の行実や学説からは、明遍が、法然教学に依りつつ、自己の浄土教的立場を形成していたことがわかる。  ところで、近代以降の明遍についての研究史において、明遍の著作は現存しないと言われてきた。だが、我が国には、『行者大要鈔』という、仏教徒の生活規範について21項目に亘って説示した著作の写本が4点現存し、これらの写本の奥書によれば、本書の著者は、上記の明遍か、あるいは、明遍と同じく、聖道門仏教から、法然の専修念仏の教えに帰依した明禅(1167~1242)ということになる。本論は、この『行者大要鈔』という著作について、書誌学的、そして浄土教学的な視点から検討することにより、その著者が明遍であることを論証しようとするものである。  『行者大要鈔』に説示されている規範は、「有智の空阿弥陀仏」(『明義進行集』第二)、そして「有智の道心者」(『法然上人行状絵図』巻第十六)と言われた明遍の本領が発揮された、広く仏教全般に共通する教理に基づいたものであり、しかも、数多くの仏教の経論釈が、その規範の根拠として、適切に示されている。そして、そこには、仏教が三国に伝来していく中でも、変わることなく大切に受け伝えられ、日本の精神文化の根底に根付いた心を読み取ることができる。

収録刊行物

  • 日本研究

    日本研究 66 101-178, 2023-03-31

    国際日本文化研究センター

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