地方都市における駅前再開発が中心市街地に与える影響

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タイトル別名
  • A study on the effect of redevelopment around station in the city center of local city
  • A case of shopping streets around Miyazaki station
  • ─宮崎駅周辺の商店街に注目して─

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p> 近年,多くの都市で駅前再開発が行われているが,既存の中心市街地にどのような影響をもたらしているのかについては十分に明らかになっていない.駅前再開発と中心市街地活性化との関係を明らかにするにあたっては,①活性化基本計画における数値目標と活性化との関係性,②商店街組織の内部構造と活性化との関係性,③活性化を目的とするイベントの継続性,④郊外化が進んだ地方都市におけるコンパクトシティ政策の有効性といった論点が重要だと考えられる.本研究では駅を核とした活性化に焦点を当て,こうした論点に関する議論を行う.本研究は,再開発で駅前が大きく変化した宮崎駅を事例として,開発の影響,市街地内のエリアごとの対応,意識等を調査し,宮崎市をはじめとする地方都市における活性化施策の方向性を示すことを目的とする.研究方法としては,通行量調査などの統計・資料の調査に加え,商店街や駅ビル等へのヒアリング調査も併せて行った.</p><p></p><p>Ⅱ 宮崎市の中心市街地の変遷と宮崎駅前再開発</p><p> 1990〜2000年頃にかけて,宮崎市においても他の地方都市と同様に従来の商業中心地の衰退が進み,2005年には郊外に大型商業施設「イオンモール宮崎」が開業した.これに対抗して中心市街地活性化の動きが強まり,2007年からは宮崎市の基本計画のもとハード面とソフト面の整備が進められた.2022年現在では中心市街地内の居住人口やクリエイティブ産業従業者数は増加傾向にあり,諸機能の中心への回帰が進んでいる.</p><p> 宮崎駅は当初,商業機能・交通結節機能ともに弱く,県の玄関口としての存在感は薄かった.そのような中,イオン開業を機に駅前整備が進められることとなり,商工会議所を中心に県や市などと協力し,2011年には複合施設のKITENビルが建設された.また,2018年にはJR九州と宮崎交通(地元のバス会社)が共同で駅ビル「アミュプラザみやざき(以下アミュ)」を整備することが発表され,2020年に開業した.同時にロータリーや駅前広場も整備され,宮崎駅近辺の商業機能・交通結節機能が強化された.以上の経緯から,従来の商業中心地との競合や棲み分けが行われていると想定し,「宮崎駅エリア」と800mほど離れた「既存商店街エリア」を設定し,分析を行う.</p><p></p><p>Ⅲ 駅前再開発による中心市街地への影響</p><p> 宮崎駅エリアでは,KITENビルが開業した2011年以降,通行量が増加傾向にある.特に2020年のアミュ開業後は増加が顕著であり,宮崎駅前商店街においてもその傾向が見られる.駅前商店街では,以前は空き店舗率が20%程だったものの,アミュ開業が発表された2018年前後には多くの店舗が入居し,理事会も一新された.対するアミュ側も共存共栄を掲げ,イベント開催などで商店街との連携を行っている.また,ターゲットを絞ったテナント構成などで独自性や魅力を創出し,一定の効果を上げている.</p><p> 一方,既存商店街エリアでは通行量や新規出店の顕著な増加は見られない.百貨店をはじめとする大型店はアミュと合同でイベントを行うなどの動きが見られるが,既存商店街では地権者とテナントの意識の差などから理事会も意思決定機関としては機能しておらず,店舗間のやりとりもあまり行われていないため,駅ビルや他商店街との連携,イベントの開催は停滞している.また,駅前再開発により駅方面からの人の流れこそ見られるものの,商店街への経済効果は乏しいという指摘もあった.こうした状況からは,駅との近接性のみに留まらない主体間の差が窺える.</p><p></p><p>Ⅳ 考察とまとめ</p><p> 駅前再開発による影響として,宮崎駅エリアを中心に通行量の増加が見られたものの,通行量の増加そのものは経済効果に乏しい場合もある(原田・戸田,2012).よって,増加した通行量を継続的な賑わいにつなげていき,経済効果を生み出す施策の展開を行う必要がある.また,エリアごとに理事会や活性化への意識など,商店街の内部組織に差異があることが窺えた.商店街組織では,構成員間の関係性や活動への積極さが組織活動の活発さにつながる(畢,2006).よって,店舗間の活発なコミュニケーションのもと,他商店街との連携や継続的なイベントを行うための仕組みづくりと,周囲の環境変化や地域のニーズに対応できる柔軟な組織づくりを行うことが重要である.加えて,コンパクトシティの実現に関しては,今回の駅前再開発で中心市街地の機能強化が行われたものの,公共交通網や歩行者空間の整備など未だ課題は山積しているため,今後のより実効的な施策に期待したい. </p><p></p><p>参考文献</p><p>原田弘子・戸田常一 2012. 都市の姿と中心市街地活性化の取り組みに関する研究. 地域学研究 42(3):777-789.</p><p>畢滔滔 2006. 商店街組織におけるインフォーマルな調整メカニズムと組織活動. 流通研究 9(1) 87-107.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295669572556672
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_124
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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