福徳岡ノ場2021年噴火による漂着軽石の円磨度の特徴―漂着場所と時間に着目して-

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Characteristics of drift pumice’s roundness associated with the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan: Focusing on locations and times of drift

抄録

<p>1.はじめに </p><p> 2021年8月13日に北福徳カルデラの中央火口丘の1つである福徳岡ノ場で噴火が発生した.初期は大規模な噴火,その後は間欠的な噴火に移行し,8月15日まで噴火が続いた(e.g., Maeno et al. 2022).その噴火によって噴出し,洋上に浮遊した軽石は0.1〜0.3 km3と推定されている(Maeno et al. 2022).本研究では,このような海底火山噴火に伴う漂流・漂着軽石の日本・海外での漂着時期,漂着量,粒子サイズ,形状に関する情報を収集し,漂流・漂着軽石の運搬・堆積過程の一般的な特徴の把握を目指している.本発表では,福徳岡ノ場2021年噴火の漂流・漂着軽石の形状に着目し,漂着場所・時間による違いを報告する. </p><p>2.研究手法 </p><p> 分析に使用した試料は,2021年8月〜2022年10月に採取された軽石である.採取した試料の2〜64 mmのサイズを対象とし,1φ毎にふるいで画分した.ただし,粒径が大きいものは数量が限られるため,計測数が少ないものは参考値として扱った.形状は,Wadell(1932)の円磨度(以後,R(0〜1の値を示し,1に近づくほど丸い))を使用し,Ishimura and Yamada(2019)の手法に基づき求めた.一部,軽石の量が少ない地域では,同一時期に採取した軽石のデータをまとめて評価した. </p><p>3.結果・考察 </p><p> 時間経過に伴うRの変化を見ると,気象庁により噴火9日後に採取された軽石のRが最も小さい値を持つ一方,最初に漂着が確認された南北大東島のRは,その後に漂着した南西諸島の値や本州などで採取された約1年後のRとほぼ同様であった.このことは,1ヶ月半程度の洋上の漂流で互いに接触することによる摩耗作用で十分に円磨が進むことを示す.この傾向は,軽石の発泡度や硬さにもよるが,一般的に漂流・漂着軽石は円磨された形状を持つと言え,漂流・漂着軽石の1つの指標として,円磨度は有効であると考えられる. </p><p> 各地点の粒径毎のRは,2-4 mm,4-8 mmにかけては増加したが,8 mm以上では粒径が大きくなるとRが減少した.これは,同様の手法に基づく河川や海岸の礫の傾向(粒径が増加するとRも増加する;石村・高橋,2022)とは異なる.したがって,粒径の大きな軽石には円磨にかかる十分な時間が経過していない,もしくは,十分に円磨が進む前に破砕してしまう,ためにRが増加しない可能性がある.一部の海岸では,最初の漂着から数ヶ月後の軽石を同様に分析したが,必ずしも各粒径のRが増加する傾向は認められなかった. </p><p> 同時期に同一の島で採取した試料のRはばらつく.これは漂着した海岸の地形や底質の影響であると考えられる.また,喜界島,奄美大島,与論島で同時期に採取された試料を比較すると,隆起サンゴ礁が広く分布する地域で採取された喜界島のRは,砂浜で採取された与論島と奄美大島のRよりも全体的に値が小さい.これは,漂着した海岸での摩耗・破砕作用も漂着した軽石のRに影響を与えていることを示唆し,岩石海岸よりも砂浜海岸のRが高い傾向にあると言える.またフィリピンの一部の海岸では,特に高いRの値が得られた.これについても海岸の底質の影響であろうと推測される. </p><p> 上述の粒径毎の傾向や海岸毎・島毎の傾向を知るためには,長期的な試料採取と計測が必要であり,より長い時間での形状変化を追う必要がある.現在,南西諸島での定期的な試料採取を行っているため,発表時にはその結果も合わせて報告する予定である.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295669572650880
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_23
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ