沿岸海底地形から認定される房総半島および喜界島沖の活断層

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  • Active Faults Identified from Coastal Seafloor Topography off the Coast of the Boso Peninsula and Kikai Island

抄録

<p>1. はじめに  陸上の変動地形の研究では,10年程前から数値地形データが重要な役割を果たすようになった。国土地理院による数値標高モデルの整備,公開とともに,解析ソフトの高性能化や普及を背景とした多様な地形表現の検討が後押しして,空中写真や地形図とは異なる重要な資料として利用が進んでいる。空中写真では観察困難な場所の変位地形を読み解く研究や,数値標高モデルによる地形表現の特性を活かし,長波長の変形や変位基準の検討が行われた(後藤・杉戸2012,後藤2015;Goto2017,Goto2018など)。一方,海底の活断層については,我が国では主に海底下の探査記録の判読に基づいて,活断層の位置形状や特性の検討が続けられている。そのようななかでも,マルチビームによる測深調査により詳細な海底地形の情報が得られるようになり,陸上と同様に地形表現を工夫することで,海底地形から活断層の位置や形状が明らかにできることが示された(泉2013,Goto2022など)。陸上と同様に,地形と地質の両方の情報から海底の変動地形や活断層を検討できる時代を迎えたと言えよう。海底の活断層と関連があるとされ,研究蓄積のある完新世海成段丘の分布する地域の周辺海域では,具体的な活断層や変動地形を見いだす積極的に研究が可能と思われる。測深調査を行うとともに,変動地形学的な判読を行い,沿岸部の陸域と海域を繋いだ変動地形学の推進が望まれる。そこで,本研究では,隆起速度が速く,多段化した完新世海成段丘が分布する房総半島の南方沖および,喜界島南東沖の海底を対象に,これまでよりも数倍の解像度を有する数値標高モデルを作成し,変動地形学的な地形判読によって活断層による地形を見いだした。2.海底地形データと地形画像の作成  本研究では,海洋研究開発機構のデータ公開サイトに格納されていた対象地域の測深データをすべて入手した。海上保安庁の測深データを含め,多数のデータの蓄積が確認できた房総半島周辺では,これらのデータを精査し,重ねあわせて1.5秒(約45m)間隔のDEMを作成した。一方,喜界島沖では,海底地形図による100m間隔程度の等深線表現の地図程度しか整備されておらず,資料が絶対的に不足していた。そこで,本研究において測深調査を依頼し,約7m間隔のDEMを作成した。これらとJ-EGG500(500m間隔),陸上の1秒間隔のALOS World 3DのDEMをSimple DEM Viewerに読み込み,Goto(2021)に準じて等深線付きの地形アナグリフを作成し,変動地形学的に判読した。3.房総半島南沖の変動地形  房総半島南端付近には4段の完新世の海成段丘が知られ,最低位面は1703年元禄関東地震によって形成されたとされる。これらの段丘面の分布高度からは房総半島南方約15km沖付近に分布する東西方向の海底活断層が隆起をもたらしたとされている。この海底活断層については探査記録の判読(活断層研究会編1991)や5秒間隔(約150m間隔)のDEMに基づく地形画像の判読(泉2013)によって推定されている。本研究で作成した1.5秒メッシュの地形画像に基づくと,これまで推定された場所周辺に,海底の扇状地面を横切る撓曲崖が連続し,一部では撓曲崖が併走する様子が読み取れた。地形的特徴から逆断層による変形と推定される。相鴨海底谷の北縁に全長約50km程度で延びており,海底活断層の位置と形状が精度よく認定できたと考える。4.喜界島南東沖の変動地形  喜界島の南端から南東に約8km沖合までは-90~30mの台地状の地形が広がる。この台地面のうち,-50m以浅の部分には閉ざされた凹地を含む比高10m以下の小刻みな凹凸のある地形が確認でき,Matsuda(2010)によれば,一部で造礁サンゴや石灰藻などの浅海性造礁生物が確認されている。この台地面には北西側に北西落ち,南東側で南東落ちを示す断層に挟まれた北東―南西走向の地塁状地形が認められる。北西落ちの断層崖は台地面を約10m変位させており,台地の北東延長の台地の斜面や,南西延長の-350mの平坦面にまで連続する。一方,台地の南東縁は南東傾斜の凸型斜面によって限られ,その斜面に複数条の低断層崖が発達する。低断層崖の南西延長は-500m付近の平坦面上に発達する比高100mの断層崖に連続する。これらの地形的特徴から北西傾斜の逆断層とそれに伴う上盤の二次的な変位の可能性が高い。さらに,喜界島の南約1km沖からは,平滑な斜面の途中に比高10m以下の急崖が南西へ約4km延びており,断層崖と考えられる。この断層崖は,直線状を成す喜界島南東縁とほぼ同じ方向で,南東縁延長に延びている。喜界島周辺には北東―南西方向の島の長軸とほぼ同じ方向の活断層が発達していることが解った。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390295669572737920
  • DOI
    10.14866/ajg.2023s.0_96
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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