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説明
感情心理学の分野では,感情制御方略の研究が進められており,特に認知的再評価と表現的抑制がしばしば比較される。一般的には,認知的再評価を用いた方が適応的であると考えられているが,その利用には得手不得手があることが分かっている。一方で,誰でも取り組める感情制御の方法としては,呼吸法が有名であり,その生理学的影響なども注目されている。本研究では,リラックス状態をもたらすゆっくり呼吸(10秒に1 回程度)の訓練が,ネガティブ・怒り感情に及ぼす影響を調べ,さらに,呼吸法の効能が感情制御方略の個人差により変化するのかを検討した。実験の結果,統制群として設定した標準呼吸群では,認知的再評価得点や表現的抑制得点の高い個人ほど,ネガティブ・怒り感情の低下が認められた。一方で,ゆっくり呼吸群では,認知的再評価得点や表現的抑制得点の低い個人ほど,ネガティブ・怒り感情の低下が認められた。これらの結果から,呼吸法は,感情制御方略にあまり依存しない個人では効果を発揮するのに対し,特定の方略を好む個人ではその効果が減じると考えられる。
収録刊行物
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- 人間科学部紀要
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人間科学部紀要 6 26-37, 2023-03
島根大学人間科学部
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390295740825260928
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- DOI
- 10.24568/54769
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- ISSN
- 24338184
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- Web Site
- https://ir.lib.shimane-u.ac.jp/54769
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB