響きあい満ちる聾の身体
-
- 西浦 まどか
- 東京大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Deaf Bodies Filled with Sound
- Musical Participation, Solitude, and Self-sufficiency in Bengkala, the "Deaf Village" in Bali
- バリ島「聾の村」ブンカラにおける音楽参与・孤独・自己充足
説明
<p>本稿は、インドネシアのバリ島を事例に、聾者による音楽実践への参与/非参与の諸相を音楽人類学の見地から論じるものである。本稿ではまず、全身感覚的な響きに焦点を当てる音響身体論と、関係性に満ちた相互行為出来事としての音楽観を展開するミュージッキング論の2つの音楽人類学の系譜を概観し、それらが音楽パフォーマンスの「音」中心性を解体してきたと同時に、音楽実践内で参与者らが「とけあって1つになる」ことに価値を置く関係論的思考を共有してきたことを示す。こうした理論的視座を通して現地の聾者と音楽との関わりを見ると、聾者は響きあう身体として聴者と共にミュージッキング相互行為へと参与し、他者とつながっているように見える。その上で本稿では、聴児たちの踊り遊びに入らずその後たった独りで踊った聾児のふるまいを事例に、聾者が音楽の場で直面する「孤独」のありかを検討する。本稿ではその要因の一端が、当該村落コミュニティにおける社会的な暗黙の領域差と、それを形成する手話言語をめぐる言語使用の問題にあると分析すると同時に、独りで踊る経験の「自己充足性」に着目する。そしてポスト関係論的な視点から「音楽するすべての身体」がそれぞれ脆く自己充足的な孤の側面を持ち合わせていると論じる。</p>
収録刊行物
-
- 文化人類学
-
文化人類学 87 (3), 441-460, 2022-12-31
日本文化人類学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390295834374216704
-
- ISSN
- 24240516
- 13490648
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可