アタヤル語群において冷感を表す語の再建

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  • Reconstruction of the words for coldness in Atayalic languages

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抄録

アタヤル語(オーストロネシア語族アタヤル語群)の「寒い」を表す形式にはgəhiraq型、məsəkinut型、tələtu型の3つの型が見られる。それぞれの型について、アタヤル語と系統的に最も近い言語であるセデック語における同源語を特定し、それぞれの型の起源を探る。まずアタヤル語のgəhiraq型については、Rinax集落(ツオレ方言系)に見られる gihaq「北」に関連がある。セデック語における同源語は ribaq「山の裏側」である(アタヤル語群祖語は*Ribaqまたは*Rihaq)。Rinax集落における「寒い」はそこから派生されたka-gihaaqである。早期の形式は ka-giha<ra>q と再建され、語根gihaqに対し化石接尾辞<ra>が挿入されたと考えられる(その後rは同一母音間で脱落)。他の集落においては giha<ra>q となった後でr が y に変わった。そしてさらに前次末音節の母音が弱化しgəhiyaqを得た。この語は「寒い」としては形態的にも意味的にも改新を経ている。次にməsəkinut型については、セデック祖語に*səkəyと再建されうる形式があり、意味は「寒い」である。これはアタヤル語məsəkinut型の同源語であり、アタヤル祖語では*səkəyの語尾yを削除し化石接尾辞-nutを付加した。アタヤル語群祖語において本来「寒い」を意味した語はこの*səkəyである。最後にアタヤル語のtələtu型はセデック祖語の同源語に*tə-ləətə(後に*tə-ləətuに変化)という同源語があり「冷たい」という意味である。アタヤル語でもtələtu型は本来「冷たい」を表していた。以上よりアタヤル語群祖語における「寒い」は*mə-səkəy、「冷たい」は*tə-ləətəと再建される。

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