夜間の LED 照明が夜行性のトウキョウサンショウウオの行動に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Effects of artificial night LED lighting on the nocturnal behavior of <i>Hynobius tokyoensis</i>.

抄録

<p>夜間の人工照明は,野生生物に様々な悪影響を及ぼしており,希少種であるトウキョウサンショウウオも夜行性であることから,何らかの悪影響を受けている可能性が考えられる.そこで本研究では,夜間の人工照明が夜行性の本種の移動距離と活動時間に及ぼす影響を明らかにするため,室内実験を行った.実験は,室温を一定に保った恒温室内に観察用の装置を設置して行った.照度の条件は 0,0.01 から 0.03,1 から 3,30 から 50 ルクスの 4 条件とし,観察装置内の本種の夜間行動は赤外線ビデオカメラを用いて観察した.撮影した動画から観察個体の移動距離と活動時間を算出した.移動距離と活動時間は,個体の体重と照度および体重と照度の交互作用を説明変数とし,個体差をランダム効果として加えた線形混合モデルにより解析し,尤度比検定を用いて検定した.移動距離に関する検定では,交互作用,照度,個体体重のすべての変数が有意となった.そのため,体重によ って照度の影響が異なるが,照度と体重により移動距離が影響を受けることが明らかとなった.一方で,活動時間に関する検定では,照度のみが有意となった.モデルを用いて照度の移動距離に対する影響を計算すれば,照度を 0.01 から 0.03 ルクスとした場合は,照明消灯条件と比較して 32 から 42%抑制された.同様に照度 1 から 3 ルクスでは 59 から 78%,照度 30 から 50 ルクスでは 77 から 100%抑制された.活動時間については,それぞれは 32 から 46%,61 から 87%,79 から 100%抑制された.夜間の人工照明は,本種の生息地に影響し,移動距離や活動時間を抑制することで,本種の採餌活動や繁殖機会の減少に繋がる恐れがあり,本種の個体数減少の要因となる可能性がある.</p>

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