<論説>渡辺善右衛門にみる朝鮮信使への馳走 (特集 : 食)

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タイトル別名
  • <Articles>Japanese Preparations for the Reception of the 1748 Diplomatic Mission from Korea, As Seen through the Eyes of Watanabe Zenemon (Special Issue : Food)

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抄録

淀藩士の渡辺善右衛門は延享五年(一七四八)の朝鮮信使の馳走役を担った人物で、「朝鮮人来聘記」などを著した。そこには食材の調達を含む、足かけ三年に及ぶ馳走の準備過程や、馳走の度合いをめぐる淀藩士らの考え方の違い、さらには馳走に便乗して私利私欲に走る役人・領民らの存在が高い鮮度で記されている。本稿では馳走の現場に分け入り、馳走側と被馳走側(日本側と朝鮮側)という軸だけではみえてこない面を、それぞれの側の重層性に留意しながら分析する。その結果、渡辺は朝鮮人を「不礼」視したが、そのような「不礼」を朝鮮の「国風」とし、それ以上は追及しなかったこと、馳走を担った藩側にとって一義的に重要であったのは、信使からの評判ではなく、将軍・幕閣や他藩からの評判であったこと、大がかりな馳走を伴う信使の存在は、かならずしも将軍権威を高める方向にだけ作用したわけではないこと、を指摘した。

収録刊行物

  • 史林

    史林 106 (1), 107-146, 2023-01-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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