手話の親族名称の変遷(1)

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タイトル別名
  • Changes of JSL Kinship Terms

抄録

本稿では文字記述のまま、筆者の手話経験を元に解釈し、その特徴を分析しようというものである。手話語彙の現在形を見てみると <息子・娘>(<子>)は昔と変わらない。<男><女>が変化していないので、変化しそうな部分は<産む>の動きだが、<産む>も変化していない。 <兄弟姉妹>は変化がある。現在形は <兄>=中指を上に上げる <姉>=小指または薬指を上に上げる <弟>=中指を下に下げる <妹>=小指または薬指を下に下げる <姉>と<妹>では、数十年前では薬指が主流であったが、現在は小指が主流になっている。 指の変化だけを見ると男子の<兄><弟>では親指から中指に変化し、女子の<姉><妹>は小指から薬指に変化し小指に回帰している。この変化過程を見ると、兄弟姉妹の表現をするのに、両親などと区別するため、指を変えるという変化が起こり、親指を中指に、小指を薬指に換えるという過程があった。なぜ中指と薬指が選ばれたのか、という理由は明確ではないが、親指には強い、小指には弱い、という意味が包含されているため、次に強い指、弱い指として選ばれたということと推測されるが、証拠はない。しかし薬指を使用する語彙は極めて少なく、動作が難しいため、元の小指に戻ったと推定される。薬指への変化は変化規則の過剰般化であったかもしれない。 指の変位より大きな変化は<年長・年少>であった掌が消滅し、動きだけになったことである。同語彙集の段階では<兄弟姉妹>は複合語であったものが、融合化により1語となる段階で掌が消滅したと考えられる。元々<年長・年少>において掌にほとんど意味はなく、上下運動の意味を示すための抽象的な代名詞のようなものであり、融合段階で消滅しても意味に変化がないからである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390296033832508160
  • DOI
    10.57462/sca.3.0_5
  • ISSN
    27583910
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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