木材パルプ由来のバイオマスプラスチック開発

  • 家高 佑輔
    王子ホールディングス株式会社 イノベーション推進本部

書誌事項

タイトル別名
  • Development of Biomass Plastics Derived from Wood Pulp

抄録

従来のプラスチックが持つ機能性や低コスト性は,現代の私たちの生活に欠かせないものとなっている。しかしながら,地球の持続可能性の観点から,地球温暖化ガスの排出や,マイクロプラスチックに変化する可能性のある廃棄プラスチックの流出が,現在問題となっており,世界中で議論が活発化している。バイオマスプラスチックはその良い代替品であると期待されているが,特に材料調達の面で困難がある。そこで当社では,大量に入手可能な木材パルプを原料とした新しいバイオマスプラスチックの製造方法を開発している。<br>これまでに当社は,エタノール生産酵母を用いた生化学的プロセスにより,木材パルプをエチレンの原料となるエタノールに変換する技術を開発してきた。本プロジェクトの手始めとして,この技術の再現性を検証し,さらに小規模および大規模スケールにてパルプ由来エタノールを製造した。このエタノールを化学的にエチレンに変換し,さらにポリエチレンに重合できることを実証した。さらに精製方法を確立し,高純度のパルプ由来エタノールを得ることで,パルプ由来ポリエチレンの製造を実証した。<br>また,エタノール生産酵母を乳酸菌に置き換えた前述の技術にてパルプ原料を生化学的に変換することで,乳酸を得られることを実証した。それらを複数の工程で精製し,化学的なプロセスを用いることで,パルプ由来のポリ乳酸を製造することも実証した。<br>今後は,日本政府が掲げる2,000千トン/年のバイオマスプラスチックの普及に合わせ,2025年以降の実用化を目指し,開発を加速していく。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 77 (5), 428-431, 2023

    紙パルプ技術協会

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