当院における心不全患者の再入院に関連する因子の検討

DOI
  • 村中 勇太
    社会医療法人財団池友会 新行橋病院
  • 北村 匡大
    学校法人巨樹の会 福岡和白リハビリテーション学院

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>心不全患者の再入院に影響する因子においては血液データや内服薬の内容などが存在すると知られている。そこで当院心不全患者において再入院に関連する因子を検討することを目的とした。今後、理学療法士・作業療法士が関わることができる知見を得ることをねらいとする。</p><p>【方法】</p><p>平成27年10月25日から令和2年10月24日までの5年間に心臓リハビリテーションを施行した心不全患者連続542例のうち過去1年以内に心不全での入院歴のない患者で自宅退院となった症例284名(平均年齢80.2歳)を対象とし、退院後の再入院有無により再入院群(65名)と、非再入院群(219名)に分類した。転院(109名)、死亡例(18名)、老人保健施設(79名)、過去1年以内に入院歴のある症例(12名)は除外とした。年齢、性別、BMI、入院時のEF値・Hb値、β遮断薬・スピロノラクトンの内服有無、歩行能力、歩行改善度、不整脈・生活習慣病・循環器疾患の既往の有無を調査した。なお、歩行能力は病前と退院時において3段階評価(1 歩行困難、2 100M以下、3 100M以上)とし、歩行改善度は病前から退院時の3段階(1 改善、2 維持、3 低下)で分類した。両群間の特徴の比較にt検定、χ2 検定を用いて、再入院に関連する因子の検討に多重ロジスティック回帰分析を使用した。</p><p>【結果】</p><p>両群間の比較では、不整脈・生活習慣病・循環器疾患の既往・β遮断薬の有無、退院時歩行・歩行改善度に有意差を認めた(P<0.05)。再入院に関連する因子では、不整脈(P<0.005)、生活習慣病(P<0.01)、BMI(P<0.01)、歩行改善度(P<0.003)が抽出された。</p><p>【結論】</p><p>患者背景である生活習慣病は心不全と関連すること、中でも高血圧症や脂質異常症、糖尿病は心不全増悪の独立因子として知られている。また、不整脈に関して心拍出量などの循環動態、心機能に直接影響を与えることやHR>80bpmは予後不良と報告されていることから今回の研究でも有意差が出たと考えられる。BMI低値は低栄養の指標でありカヘキシーや心悪液質との関連が示唆されるが、診断基準の1つであるHb値は今回有意差を認めていない。このことから加齢に伴う低栄養が原因で起こる筋委縮なども含め、低栄養を主とする病態がBMI低値に関与している可能性が考えられる。</p><p>更に歩行改善度に関して、低下例が心不全の再発に関与していることが示唆された。BMI低値の原因と考えられる低栄養からの病態が結果として筋委縮や全身耐久性低下を招き、リハビリ介入による効果を減弱させ歩行改善度が低くなり心不全の増悪、再入院に繋がっていることが考えられる。</p><p>再入院の関連因子およびその集団の特徴から理学・作業療法による介入の知見は得られた。しかし、単に病前歩行能力を目指す介入では更なる低栄養からの心不全増悪を招く危険性があることも示唆された。今後はBMI低値の原因を追跡調査し、より詳細な運動負荷量の設定に繋げていきたい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づき、当院倫理委員会の承認を得たうえで患者が特定されないよう個人情報は記載せず、データ管理にも配慮し、身体的負担が増大しないよう歩行能力の評価は入院時と退院時のみとした。尚、演題発表に関連し開示すべきCOI(利益相反)関係にある企業等はありません。</p>

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