消化器がん周術期リハビリテーション治療に関する術前スクリーニングの取り組みと有用性についての検討

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>当院では従来、消化器がんの周術期リハビリテーション治療は主治医がその必要性を判断することが多く、高齢の場合や術後合併症のリスクが高いと判断された場合は、術前リハビリテーション治療を依頼されていた。一方で、術後合併症または離床遅延などによって筋力・歩行能力低下をきたし、リハビリテーション治療を依頼されるケースもあった。当院ではこのような離床遅延を予防し、術後合併症のリスクが高い症例を術前早期にリハビリテーション治療に繋げることを目的として、2020年10月より75歳以上の胃外科、肝・胆・膵外科の手術症例を対象に術前スクリーニングを開始した。今回、術前スクリーニングはより多くの術後合併症リスクの高い症例を拾い上げるために、感度を高くすることを目標とした。今回、術前スクリーニングの有用性について、術後合併症の有無に着目して検討する。</p><p>【方法】</p><p>2020年10月~2021年3月までに当院の胃外科、肝・胆・膵外科にて手術を予定した75歳以上の患者71例に術前スクリーニングを実施し、手術を施行した61例を対象とした。評価内容は年齢、予定術式、肺機能、呼吸器疾患の既往・フレイル・サルコペニアの有無とし、80歳以上、高侵襲手術、換気障害、呼吸器疾患の既往を有する、フレイル、サルコペニアに1項目以上該当で陽性とし、該当しない場合を陰性とした。フレイルの評価は改定日本版フレイル基準を、サルコペニアの評価はAsian Working Group for Sarcopenia 2019の基準を使用した。主要評価項目は術後合併症とした。術後合併症はClavien-Dindo分類(以下:CD分類)grade1以上を術後合併症有りと定義し、術後合併症に対する術前スクリーニングの感度、特異度を算出した。</p><p>【結果】</p><p>術前スクリーニングを行い、手術を施行した61例のうち、スクリーニング陽性は38例、陰性は23例だった。術後合併症を発症したのは29例、このうち偽陰性は5例(17.2%)だった。5例のうち、CD分類grade3a以上となり術後リハビリテーション治療開始となったのは1例で、他4例は術後合併症を発症したが重篤な転帰を辿らなかった。本スクリーニングの検査精度は感度82.8%、特異度56.3%であった。</p><p>【結論】</p><p>今回の術前スクリーニングでは特異度と比較して感度が高い結果となった。また、偽陰性5例のうち、術後合併症により術後リハビリテーション治療開始となったのは1例であった。上記から、本スクリーニングは術後合併症の発症リスクが高い症例を抽出する評価方法として有用であると考える。今後はスクリーニング陰性ながら術後リハビリテーション治療開始となった症例について詳細を評価し、更に感度を高められるよう追加評価項目について検討していく必要があると考える。また、スクリーニング陽性となった症例に対して周術期リハビリテーション治療の方法についても検討が必要であると考える。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、当院倫理委員会の承認を得ている。今回の調査、報告にあたり、症例の情報については個人が特定できないよう配慮し取り扱っている。</p>

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