デスクワーカーの慢性頚部痛有訴の有無に影響を及ぼす身体機能因子 -整形外科クリニック患者の横断研究-

DOI
  • 平野 健太
    医療法人社団紺整会 船橋整形外科 市川クリニック
  • 網代 広宣
    医療法人社団紺整会 船橋整形外科 市川クリニック
  • 山野 拓也
    医療法人社団紺整会 船橋整形外科 市川クリニック
  • 伊牟田 真樹
    医療法人社団 紺整会 船橋整形外科 みらいクリニック
  • 仲島 佑紀
    医療法人社団紺整会 船橋整形外科 市川クリニック

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年,企業のコスト損失の60%がプレゼンティーイズムで,主要因は身体の痛みとされており,内訳は頚部痛・肩こり,睡眠不足,腰痛の順に多いと報告されている</p><p>頚部痛を調査した先行研究では、身体機能の特徴としてFlat back postureや頸部伸展可動域の低下、頸部深層筋筋活動の減少が報告されている。</p><p>しかし、デスクワークに従事している慢性頚部痛患者の身体機能を包括的に調査した報告は渉猟した限り見つからないため,慢性頚部痛有訴の有無に影響を及ぼす因子を明らかにすることとした</p><p>【方法】</p><p>対象は2019年9月~2021年4月に当院で開催しているデスクワーカーのための姿勢教室に参加希望した90名の中で,質問紙で「背部痛の有無」,「愁訴期間」,「症状部位」を聴取し,背部痛が有りGuzmanらの定義で定められている頚部痛の部位に一致し,3ヶ月以上の症状を有しているもの(以下,頚部痛群)30名(46.9±11.4歳)と脊柱疾患以外で且つ背部痛が無い(以下,無痛群)30名(47.4±10.5歳)とした除外基準は上肢の神経症状,脊柱手術歴のある症例とした</p><p>方法は頸部評価として頚椎可動域(以下,CROM)屈曲,伸展,側屈,回旋,頭蓋脊椎角(以下,CVA),体幹評価として体幹可動域(以下,TROM)回旋,円背指数,骨盤傾斜角,胸郭拡張差,股関節評価として股関節可動域屈曲,伸展,90°回旋,0°回旋,Straight Leg Raising test,Heel Buttock Distanceとした</p><p>統計解析は,頚部痛有訴の有無で2群に分類し,各評価項目の単ロジスティック回帰分析より変数選択を行った事後検定として,頚部痛有訴の有無を従属変数,単ロジスティック回帰分析より有意差を認めた変数と共変量として年齢,性別,BMIを強制投入し,多重ロジスティック回帰分析を行った統計ソフトはRコマンダー4.0.2を使用し,有意水準を5%とした</p><p>【結果】</p><p>単ロジスティック回帰分析の結果,CROM伸展(or=1.07,95%信頼区間(以下,95%CI)=1.02-1.12),回旋(or=1.07,95%CI=1.03-1.13),CVA(or=1.17,95%CI=1.02-1.36),TROM回旋(p=0.01,標準回帰係数=0.38,決定係数R2=0.13),胸郭拡張差(or=1.05,95%CI=1.01-1.10)が抽出された</p><p>頚部痛有訴の有無を従属変数,単ロジスティック回帰分析より有意差を認めた変数と共変量として年齢,性別,BMIを強制投入した多重ロジスティック回帰分析の結果,CROM伸展(or=1.06,95%CI=1.01-1.13),回旋(or=1.07,95%CI=1.02-1.12),CVA(or=1.22,95%CI=1.05-1.46),胸郭拡張差(or=1.76,95%CI=1.27-2.69)TROM 回旋(or=1.04,95%CI=1.01-1.10)の全項目で有意な関連性を示した</p><p>【結論】</p><p>慢性頚部痛有訴に影響を及ぼす因子として患部機能としてCROM伸展,回旋,CVAに加え,患部外機能として胸郭拡張差とTROM回旋が抽出されたことから,患部外機能も含めた治療展開が必要であることが示唆された</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は船橋整形外科病院倫理委員会の承認(承認番号2020038)を受け,対象者に本研究の目的と内容を十分に説明し,結果は学術的研究以外に使用しないことおよび個人情報を厳守することなどを明記した同意書に署名を得て実施した</p>

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