閉経後骨粗鬆症治療におけるVitamin D摂取の有効性:モデル動物を用いた検討

DOI
  • 坪内 優太
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 髙瀬 良太
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 片岡 高志
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 大津 健史
    大分大学 理工学部 創生工学科 福祉メカトロニクスコース
  • 池田 真一
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部 大分大学 医学部 整形外科
  • 片岡 晶志
    大分大学 福祉健康科学部 理学療法コース
  • 津村 弘
    大分大学 医学部 整形外科

抄録

<p>【目的】</p><p>骨粗鬆症に対する栄養・薬物療法で以前から注目されているのはVitamin D(VitD)であり,骨微細構造の改善効果があると報告されている.他の骨粗鬆症治療薬と比較して低リスクであることから,栄養療法としては予防的に,薬物療法としては早期に用いられる.また,運動療法や骨粗鬆症治療薬と併用して使用されることも多いが,その効果を詳細に検討した報告は限定的である.一方,新規骨粗鬆症治療薬であるRomosozumab(ROMO)はスクレロスチンを阻害するモノクローナル抗体である.骨細胞から分泌されるスクレロスチンは骨芽細胞の抑制と破骨細胞の活性に働き,骨代謝を負の方向へ促進させる.骨に加わるメカニカルストレスに応じて分泌量が抑制されるため,運動療法との関連が非常に強いタンパク質である.本研究は,ラット閉経後骨粗鬆症モデルに対してVitDとROMOを投与し,骨構造の変化を観察することで,骨粗鬆症治療におけるVitDに有効性を明らかにすることを目的としている.</p><p>【方法】</p><p>24週齢雌SDラット40匹に対して卵巣摘出術を施行しラット骨粗鬆症モデルを作成した.さらに,術後8週時に右大腿骨を横骨折させ髄内釘で固定,骨粗鬆症性骨折モデルを作成した.つまり,左大腿骨で骨粗鬆症に対する効果を検討すると同時に,右大腿骨で骨粗鬆症性骨折に対する効果を検討する.Control群(C群),ROMO(25mg/kg, 月1回投与)投与群(R群),VitD(0.2mg,週2回投与)投与群(VitD 群),ROMO+VitD併用群(R+VitD群)の4群に各10匹ずつ振り分けた.投与開始後10週で両大腿骨を採取し,μCTによる骨形態計測と,3点曲げ試験機を用いた骨強度計測を実施した.統計解析にはSPSS22.0を使用,一元配置分散分析をした後,Bonferroni法による各群間の比較を実施した.</p><p>【結果】</p><p>海綿骨における骨形態計測の結果では,C群やVitD群と比較し,R 群およびR+VitD群の海綿骨量や骨梁幅,骨梁数の改善を認めた.皮質骨においても同様に,皮質骨厚や皮質骨面積の改善を認めた.さらに,R+VitD群はR群と比較しても改善傾向であった.骨強度計測ではC群やVitD群と比較し,R群およびR+VitD群では最大圧縮荷重やヤング率の改善を認めた.一方,骨折部における骨形態計測では,C群やVitD群と比較しR群で仮骨量や骨梁数に改善を認めていたが,VitD併用による効果の増強は認めなかった.</p><p>【考察】</p><p>ROMOはスクレロスチンを阻害することで骨芽細胞の活性と破骨細胞の抑制に働き,骨構造を改善させる働きがある.これは,運動療法で得られる効果の機序に非常に近い.また,VitDも骨形成の促進や骨密度上昇など,骨構造の改善効果があると報告されている.本研究の結果から,薬物・運動療法とVitDを併用することで,骨微細構造および骨強度に対する改善効果をわずかに補助することが示唆された.一方で,VitDは骨粗鬆症性骨折に対する治療効果は乏しい可能性がある.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>動物の愛護及び管理に関する法律を遵守し,学内規程の「大分大学医学部動物実験指針」に基づき,動物実験計画書を動物実験委員会に提出し,同委員会の承認を得て適正な動物実験等の方法を選択して実施した.</p>

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