コロナ禍における地域在住高齢者のうつの実態と心理的フレイルの予防に向けた取組の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大して以降,地域在住高齢者の活動量は3割低下している(Yamada,2020).そして,活動量の減少に伴う高齢者の認知機能の低下(久野,2021)や身体的フレイルの進行(飯島,2020)が報告されるようになった.一方,心理的フレイルや社会的フレイルに関する調査報告は非常に少ない.</p><p>今回,COVID-19の感染拡大の第2波が終息を迎えていた時期に,身体的/心理的フレイルの予防を目的とした地域支援教室を開催することができた.周辺地域に在住する高齢者の生活の実情と心理状況についてアンケート調査を行った.コロナ禍における高齢者のうつの状況を把握し,心理的フレイルの予防に向けた取組について検討することとした.</p><p>【方法】</p><p>2020年9月にフレイルの予防に関する2回シリーズの支援教室を実施.1回目は身体的フレイルを,2回目は心理的フレイルを中心的な話題とした.2回目の教室の参加者に対して,基本チェックリストを参考とした日常生活関連動作(APDL)の実施状況とうつ状態についてアンケートを行った.APDLの実施状況と教室への参加回数の違いが心理的フレイルに与える影響について調査した.</p><p>【結果】</p><p>第1回の教室の参加者は8名(81.9±8.0歳),第2回の教室は17名(81.0±8.2歳),2回とも参加された方は6名(81.5±9.4歳)であった.第2 回の教室に参加された17名の内,うつ状態だった方は9名(52.9%)であった.心理的状況に対する教室への参加回数の違いを調べたところ有意差を認め,健常な方は2回参加していた(Fisherの直接確率検定p=0.05,Odds比11.1).APDLの実施状況については有意差を認めなかった(Wilcoxonの順位和検定 W=28,p=0.471).</p><p>【結論】</p><p>支援教室の参加者の約半数が,うつ状態であった.これまで報告されているうつ状態の方の割合(10‐40%)と比較すると高値であった.コロナ禍における様々な制約の下で,うつ状態の方が増加傾向であることが示された.</p><p>APDLの実施状況においては,健常な方とうつ状態の方で違いを認めなかった.しかし健常な方は教室へ2回参加していた.これらのことから,日常生活を維持するために必要な活動だけではうつ状態になることを予防することは困難と考えられた.APDLを継続できるだけの運動機能を維持し,支援教室への参加といった社会活動を実施することが心理的フレイルの予防に重要になると考えられた.コロナ禍のような状況においても,感染対策を徹底し安全性を十分考慮した上で,地域の住民が社会参加できるような機会を創出していくことが,心理的フレイルの予防につながる可能性がある.</p><p>【まとめ】</p><p>コロナ禍において,うつ状態にある地域在住高齢者が増加している傾向が示された.APDLを継続していたとしても,心理的なフレイルは予防できず,On line等で動作能力の維持を図りつつ,感染対策と安全性を確保した対面式の社会活動の機会を創出していくことが,心理的フレイルの予防につながると考えられた.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>参加者には書面にて今回の取組について説明し,アンケート結果は匿名にて学術的目的に使用,発表することに対して同意の署名を得た.</p>

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