病棟看護師における勤務時間中の座位行動と非特異的腰痛及び労働生産性との関連性

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>労働者における座位行動の増加は内部疾患の発症リスクや総死亡リスクを高めることが報告され(福島, 2020)、座位行動と健康リスクの関連性が注目されている。近年の看護業務は電子カルテの導入により、VDT作業による座位行動の割合が増加している。看護師の非特異的腰痛において座位行動の増加が発症要因の一つになっている可能性が考えられる。今回、業務時間内の活動量を測定し時間別活動強度を調査することで、座位行動と非特異的腰痛及び労働生産性との関連性を明らかにすることを目的とした。</p><p>【対象と方法】</p><p>対象は、医療機関に常勤勤務する病棟女性看護師58名とした。除外基準は、腰痛有訴者の中で、重篤な器質的疾患の可能性がある腰痛のあるもの、神経症状を伴うものとし、特異的腰痛者は調査から除外した。</p><p>調査項目は、1)基本情報(年齢、経験年数、労働時間、時間外労働)、2)仕事パフォーマンス(WHO Health and Work Performance Questionnaire Japanese edition)、3)Oswestry Disability Index(以下、ODI)、4)業務前後の腰痛Visual Analog Scale(以下、VAS)変化量、5)業務時間中の活動量とした。活動量は、日勤勤務時間(8:30~17:00)に活動量計(オムロン株式会社製 HJA-750C Active style Pro)を装着して測定した。時間ごとの活動強度から1.5METS以下の活動を座位行動(sedentary behavior; SB)、1.6~2.9METSの活動を低強度身体活動(light-intensity physical activity; LPA)、3METS 以上の活動を中高強度身体活動(moderate-to-vigorous-intensity physical activity; MVPA)とし、勤務時間中の各活動強度時間を算出した。単変量解析は、仕事パフォーマンス、腰痛VAS変化量、ODI、SBの関係性についてPearsonの相関係数で算出した。次に多変量解析として、ODIを目的変数、年齢、仕事パフォーマンス、SB、MVPA、腰痛VAS変化量、肩こりVAS変化量を説明変数とし、重回帰分析を行なった。有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>座位行動と仕事パフォーマンスとの間に有意な負の相関(r=-0.24,p<0.05)、座位行動と腰痛VAS変化量との間に有意な正の相関(r=0.27, p<0.05)が認められた。ODI得点を目的変数とした重回帰分析の結果,SB(β=-2.93, p<0.05)と経験年数(β=0.35, p<0.01)の変数において有意な独立因子として抽出された。</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果から、座位行動は仕事パフォーマンス及び腰痛の変化量と関連性が認められた。座位行動は健康リスクに影響するだけでなく、労働生産性にも関係することが示唆された。また、重回帰分析の結果より、非特異的腰痛と関連性のある因子は座位行動であり、中強度の身体活動とは関連性が認められなかった。身体的負担の大きい業務よりも座位行動が看護業務における非特異的腰痛の誘因となる可能性が示された。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、JA愛知厚生連足助病院倫理委員会の承認を得た。</p><p>本研究の趣旨、内容、個人情報の保護や潜在するリスクなどを書面にて十分に説明し、署名による同意書の承諾を得て研究を行った。</p>

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