骨粗鬆症性骨折に対する抗Sclerostin抗体の最適な投与時期の探索:モデル動物を用いた検討

DOI
  • 坪内 優太
    令和健康科学大学リハビリテーション学部 理学療法学科 大分大学医学部 整形外科
  • 高瀬 良太
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 片岡 高志
    大分大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 児玉 浩志
    社会福祉法人わかば会 障害支援センター 清流の郷
  • 片岡 晶志
    大分大学福祉健康科学部 理学療法コース
  • 津村 弘
    大分大学医学部 整形外科

抄録

<p>【目的】</p><p>Sclerostin(SOST)はWnt/β-catenin経路を阻害することにより骨形成を負に制御している.Romosozumab(ROMO)はヒト化抗SOST抗体であり,その働きを阻害することで骨形成を促進させる.骨折に対するROMOの効果について,いくつか報告されているものの,依然として一定の見解は得られていない.我々は骨癒合過程におけるSOST阻害の適切な時期を探索することで,より強い骨癒合促進効果が得られるのではないかと考えた.そこで本研究では,卵巣摘出ラット用いて難治性骨折の骨癒合に対するROMO の最適な投与時期の検討をした.</p><p>【方法】</p><p>24週齢の雌SDラット33匹に対してOVXを施行した.8週後に右大腿骨骨幹部の骨膜剥離と横骨折をした後,髄内釘による骨接合術を施行した難治性骨折モデルを作成した.その後,Control群と骨折直後よりROMO(25mg/kg)1回/月を3回投与した群(R群),骨折直後よりROMO(25mg/kg)1回/2週を3回投与した群(earlyR群),骨折後4週時よりROMO(25mg/kg)1回/2週を3回投与した群(lateR 群)を各10匹に振り分けた.また,偽手術を施行したSham群を 準備した.骨折後10週時に屠屠,屠大腿骨を摘出し,屠X線画像(SOFTEX, Japan)による骨癒合評価と,µCT(SkyScan1172, Kontich, Belgium)による骨形態計測を行った.骨癒合評価には,4-point scaleとRadiographic Union Score for Tibial Fractures(RUST)を用いた.統計解析にはGraph Pad Prism ver.9.3を使用し,一元配置分散分析をした後,Post hoc tsetとしてTukey検定を用い,各群間の比較を実施した.</p><p>【結果】</p><p>屠X線画像による骨癒合評価では,4-point scaleおよびRUSTともに各群間での有意な差は認めなかった.µCTによる骨形態計測では,Sham群の仮骨量(BV)と比較しControl群,R群,earlyR群で有意に低値を認めたが,lateR群とは有意差を認めなかった.骨梁間距離(Tb.Sp)はSham群と比較しControl群で有意に高値を認めた.骨梁数(Tb.N)と骨梁幅(Tb.Th)においては各群間で有意な差を認めなかった.</p><p>【結論】</p><p>骨折治癒過程におけるSOSTの働きはいまだ不明瞭な点が多い.今回,ROMOの投与を遅延させることで骨癒合の促進効果は得られなかったものの,仮骨量の増加効果を認めた.先行研究には,骨 折直後よりSOSTの発現量が上昇するといった報告もある.骨折早期にROMOを投与しSOSTの働きを抑制することは,正常な骨癒合過程を阻害する可能性も考えられる.今後はSOSTの働きを調査しつつ,ROMOの骨折治癒促進効果と適切な投与時期を探索していく.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>動物の愛護及び管理に関する法律を遵守し,学内規程の「大分大学医学部動物実験指針」に基づき,動物実験計画書を動物実験委員会に提出し,同委員会の承認を得て適正な動物実験等の方法を選択して実施した.</p>

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