健常高齢女性における強度別身体活動量と血圧および血管機能の関係

DOI
  • 濵地 望
    国際医療福祉大学福岡保健医療学部 理学療法学科
  • 高野 吉朗
    国際医療福祉大学福岡保健医療学部 理学療法学科
  • 松田 憲亮
    国際医療福祉大学福岡保健医療学部 理学療法学科
  • 森田 義満
    福岡山王病院 リハビリテーションセンター
  • 井上 健
    高木病院 リハビリテーション科
  • 森田 由佳
    アイエック訪問看護ステーション西

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>わが国における非感染性疾病による死亡リスクの要因は,喫煙に次いで高血圧と運動不足が占めており,身体活動量が多いほど,死亡リスクを低下させる。近年,健常高齢者において,低強度の身体活動であっても健康に有益であるとの知見が蓄積されているが,強度別身体活動量とメタボリックシンドロームの主たる原因となる動脈硬化との関係についての報告はまだ少ない。そこで,本研究では,健常高齢女性を対象に強度別の身体活動量と血管機能の関係を検討した。</p><p>【方法】</p><p>対象は,Asian Working Group for Sarcopenia 2019 による診断基準に該当しない地域在住の健常高齢女性12名(平均年齢77.2±3.4歳)とした。身体活動量の測定は,3軸加速度計(HJA-750CActive style Pro,オムロンヘルスケア社製)を用い,得られたデータから,歩数,身体活動量(低強度(LPA):1.0~2.9 METs,中強度(MPA):3.0~5.9 METs,高強度(VPA):6 METs以上)の1日当たりの平均値を算出した。血圧は収縮期/拡張期血圧(SBP/DBP),血管機能は心臓足首血管指数(CAVI),足関節上腕血圧比(ABI)を測定した。強度別身体活動量と血圧および血管機能の関係は,Pearsonの積率相関係数を用いて分析し,統計学的有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>健常高齢女性の身体活動量は,歩数 4980.6±1862.9歩/日,LPA669.6±89.9分/日,MPA 76.5±22.2分/日,VPA 0.8±0.6分/日であった。また,血圧および血管機能は,SBP 140.2±18.5 mmHg,DBP 82.6±9.4 mmHg,CAVI 9.2±1.0,動脈硬化予備群(9.0≦CAVI)は7名,ABI 1.07±0.07,下肢動脈狭窄予備群(1.41≦ABI ≦0.90)は存在しなかった。歩数はDBP(r=-0.639)と,LPAはCAVI(r=-0.668)と,MPAはSBP(r=-0.619)およびDBP(r=-0.640)と有意な負の相関を認めた。VPAは血圧および血管機能と有意な関係は認められなかった。</p><p>【結論】</p><p>低強度の身体活動時間が長い健常女性高齢者は,しなやかな血管であることが示唆された。また,健常高齢女性の動脈硬化性疾患の予防には,中強度の歩行を中心とした身体活動を維持し血圧の上昇を防ぐ必要性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,ヘルシンキ宣言に基づき計画され,所属機関の倫理審査委員会にて承認後(承認番号:19-Ifh-088),対象者には,研究の内容・趣旨,参加の拒否・撤回・中止による不利益を被らないことを十分に説明し,書面にて同意を得て実施した。</p>

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