へき地医療拠点病院における自宅退院した患者の再入院を予測する因子の検討第2報

DOI
  • 吉田 司秀子
    外ヶ浜町国民健康保険 外ヶ浜中央病院 青森県立保健大学大学院 健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域
  • 川口 徹
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域
  • 新岡 大和
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域
  • 篠原 博
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域
  • 工藤 健太郎
    青森県立保健大学大学院 健康科学研究科 保健・医療・福祉政策システム領域

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>当院は、住み慣れた自宅・地域でより長く生活したいという患者の思いを尊重する地域包括ケアシステムの構築において重要な役割を果たしている。以前、我々が当院で行った調査において、在宅復帰が可能になる因子として、同居家族がいること、退院時移動能力が高いこと、認知機能低下がないことが明らかになった。しかし、在宅復帰をしても、在宅生活を長く継続できず、再入院するケースもある。そのため、前述の3要因が、再入院を予防し、より長く在宅生活を続けられる要因にもなると考え、再入院しない群に同様の傾向があると予測し、再入院する群と、再入院しない群にはどのような違いがあるのかを調査したため報告する。</p><p>【方法】</p><p>2018年4月1日から2020年6月31日の期間にリハビリテーション(以下、リハ)処方が出されたケースを対象に、診療カルテおよびリハ実施記録を用いて後方視的にデータを収集した。患者の傾向を明らかにするため記述統計を用いた。さらに、性別、年齢、在院日数、リハ処方が出されるまでの期間、疾患の種類、緩和ケアに該当する疾患の有無、居住する地区、当院からの直線距離、リハ開始時のFIM得点(合計、運動、認知)、退院時の移動能力、認知機能低下の有無、同居家族の有無および人数、同一町村内に居住する家族の有無の各項目において、再入院あり群と再入院なし群の違いを把握するため、t検定、Fisherの正確検定を用いた。解析には、統計ソフトEZRを用い、有意水準を5%とした。</p><p>【結果】</p><p>当院で、上記期間中にリハ処方が出された全449ケースのうち、繰り返し入院した者の2回目以降の入院を除外した重複のない336名を記述統計の対象とした。その後、転帰先が自宅となった105名(平均年齢81.0±10.2歳、男性45.7%)を選択し、再入院あり群と再入院なし群とを比較するための解析対象とした。自宅退院105名のうち29.5%が再入院をしており、再入院なし群は再入院あり群に比べ、独居が多く(p=0.010)、同居家族がいる場合には人数が少なく(p=0.019)、当院と自宅までの直線距離が800m未満または15km以上であった(p=0.039)</p><p>【結論】</p><p>今回、同居家族がいて、退院時の移動能力が高く、認知機能低下がない患者が、再入院せずに在宅生活を長く続けられるという仮説のもと、調査を行ったが移動能力、認知機能の項目では再入院あり群と再入院なし群で有意差はなかった。また、同居家族に関しては、同居家族がいる患者の方が再入院しているケースが多かった。今後は、家族の年齢、就労の有無、続柄等によりどの程度家族の支援を期待できるかといった点や、移送サービスや訪問リハなど受けられるサービスの地区ごとの違いも考慮して検討したい。</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>本研究は、ヘルシンキ宣言に則って行い、得られたデータは個人情報が特定できないように配慮した。</p>

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