職業性腰痛に対して関連因子の検討 -アンケート、関節可動域、体組成計の評価項目をあげて-

DOI
  • 武井 宏光
    新座志木中央総合病院 リハビリテーション科
  • 石川 慧斗
    新座志木中央総合病院 リハビリテーション科
  • 真水 鉄也
    新座志木中央総合病院 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>近年、厚生労働省や日本理学療法士協会で就労者に対する腰痛予防の重要性が言われている。臨床的には、腰痛の原因が腰背部だけではなく、隣接関節が影響している事を多く見受けられる。先行研究では、腰痛と体幹筋量についての報告はされている。一方で、腰痛に関するアンケート結果と隣接関節の関係性についての報告は現状少ない。そこで本研究の目的は、本病院職員を対象とし腰痛に関するアンケート、骨格筋量と隣接関節の評価項目をあげ、その関係性について検討する。</p><p>【方法】</p><p>対象は2022年4月から2022年5月まで当院のリハビリテーション科に在籍している職員60名(男性28名、女性32名)とした。アンケート項目は基本情報(性別、年齢、職種、経験年数)、腰痛歴(腰痛 の有無、発症時期)、疼痛(増悪肢位、NRS)、受診歴(受診の有無)を選択形式で行った。隣接関節の評価として、関節可動域(胸腰部屈曲、伸展、左右回旋、左右側屈)(股関節屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋)を測定し、左右の測定結果を絶対値とし差を算出した。下肢筋のタイトネスの指標としPatrick test、Over’s test、Thomas test、Ely test、SLR(Straight Leg Raising test)やFFD(Finger Floor Distance)を評価した。骨格筋量は体組成計を用いて体重、体脂肪率、骨格筋指数、四肢骨格筋量を算出した。腰痛 の有無で2群に分類し、各評価項目の比較をMann-WhitneyのU 検定、Spearmanの順位相関係数で行った。統計解析にはJSTAT Version 13.0を用い、有意水準はすべて5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>腰痛を有する者は60名(83.3%)であった。腰痛あり群と腰痛なし群を比較したところ、骨格筋指数で有意差はなかった(p=n.s)。股関節屈曲の左右差では有意差が認められた(p=0.016)。FFDと左右SLRの関係性では、左右ともに正の相関が得られた(右:r=0.702, p<0.05、左r=0.718,p<0.05)。胸腰部屈曲とFFDでは相関が得られなかった。</p><p>【結論】</p><p>病院職員の腰痛には隣接関節が関与する事が確認できた。この結果より、腰痛予防のプログラム立案には隣接関節の左右差改善が必要だと示唆された。しかし、現状の評価項目では詳細な分類は難しいため、今後は評価項目の検討や他職種とのデータを比較することが必要である。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、当院の倫理委員会の承認を得た。ヘルシンキ宣言に基づき、研究の目的および研究方法を説明し、同意を得られた者を対象者とした。</p>

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