地域在住自立高齢者の社会的孤立は呼吸機能と関係する

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>本邦では人口の高齢化の進展に伴い,健康寿命の延伸が課題となっている.高齢者では,運動機能だけでなく呼吸機能も加齢により低下し,生活機能や生命予後に影響することが報告されている.さらに,我々は高齢者の呼吸機能が運動機能や認知機能と関係することを明らかにし,高齢者における呼吸機能は,健康の指標として有用な要素である可能性を示してきた.近年,運動機能の低下には社会的孤立も関与することが示されているが,呼吸機能と社会的孤立との関連性は報告がない.本研究の目的は地域在住自立高齢者の呼吸機能と社会的孤立の関係を検討することとした.</p><p>【方法】</p><p>研究デザインは横断的観察研究とした.対象は要介護認定のない地域在住自立高齢者285名,(女性210名,平均年齢72.8±4.8歳)とした.除外基準は心疾患,呼吸器疾患を有する者とした.調査項目は呼吸機能,社会的孤立の有無,運動機能,認知機能,基本属性とした.呼吸機能は,努力性肺活量,一秒量,一秒率を測定した.社会的孤立は斉藤ら(2015)の報告に基づき他者との交流頻度を調査し,他者との交流頻度が週一回未満に該当した者を社会的孤立と定義した.さらに,運動機能は5m快適歩行速度,認知機能はTrailmaking test part Aを評価した.基本属性として,年齢,性別,Body mass index,併存疾患の有無,抑うつ(5項目Geriatric depression scale),老研式活動能力指標を調査した.統計学的解析はMann Whitney U検定で社会的孤立の有無と呼吸機能との関係を調査した.さらに,呼吸機能を従属変数,社会的孤立を独立変数,運動機能,認知機能,基本属性を調整変数とする重回帰分析を実施した.統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>社会的孤立に該当した者は23名(8%)であった.Mann-Whitney U 検定の結果,社会的孤立に該当する群は,有意に一秒率が低値であった(p=0.01).努力性肺活量と一秒量には有意差を認めなかった.従属変数を一秒率とする重回帰分析の結果,運動機能,認知機能,基本属性で調整をしても社会的孤立の有無は一秒率と有意な負の関係を認め,社会的孤立があると一秒率が4.9(95%C.I: -7.6~-2.3)%低値となることが示された.</p><p>【結論】</p><p>地域在住自立高齢者の呼吸機能に対して,社会的孤立が運動機能や認知機能の影響を調整しても負の関係を認めた.社会的孤立状態にある高齢者では,運動機能や心理機能だけでなく,閉塞性喚起障害などの呼吸機能も低値である可能性があり,呼吸機能検査や介入への必要性が示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した(承認番号2018-008B-2).また,全対象者に対して書面にて研究参加に関する同意を得た.</p>

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