橈骨遠位端骨折患者の歩行特徴の解析と転倒リスクの検討

DOI
  • 山本 皓子
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 整形外科学
  • 二瓶 史行
    NECバイオメトリクス研究所
  • 中原 謙太郎
    NECバイオメトリクス研究所
  • 山田 英莉久
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 整形外科学
  • 井原 拓哉
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 運動機能形態学
  • 稲井 卓真
    産業技術総合研究所 健康医工学研究部門 くらし工学研究グループ
  • 小林 吉之
    産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 運動機能拡張研究チーム
  • 藤田 浩二
    東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 運動機能形態学

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>橈骨遠位端骨折(DRF)は、比較的活動度の高い患者が初発の脆弱性骨折として受傷することが多く、その後の2次骨折リスクが高まることが知られている。DRFの最多の要因は転倒であり、歩行運動の異常が転倒や骨折のリスクを増加させることから、近年、転倒や骨折の予防を目指した歩行解析が注目されている。</p><p>今回我々は、転倒・骨折リスクの高い歩行の特徴を無意識下の歩行から抽出することを目的とし、靴インソールに内蔵する小型の慣性センサを用いて、DRF患者における日常生活空間における歩行解析を行なった。</p><p>【方法】</p><p>初発脆弱性骨折としてDRFを受傷し手術加療を行った40歳以上の女性15例(DRF群、66.6歳)、骨折既往のない40歳以上の女性20例(健常群、66.3歳)を対象とした。各自の履き慣れた靴に慣性センサを内蔵した歩行センシングインソールA-RROWG(NEC)を挿入し、計測期間中、無理のない範囲でインソールを挿入した靴を使用することとした。足部の加速度から通常歩行を検知し、その後の連続する3歩行周期分の歩行データを保存し、4-6週の計測期間後に、回収したデータから、歩行速度、ストライド長、接地角度、離地角度、足上げ高さ、外回し距離、足部外転角度をそれぞれ算出した。各項目に関してStudent t検定によりp<0.05を有意として統計学的検討を行った。</p><p>【結果】</p><p>日常の各パラメータ(DRF群/健常群)は、歩行速度:毎時4.17km/毎時4.37km(p=0.07)、ストライド長:120.3cm/120.3cm(p=0.99)、接地角度:21.4度/24.8度(p<0.001)、離地角度:69.1度/69.9度(p=0.59)、足上げ高さ:13.4cm/13.2cm(p=0.59)、外回し距離:4.24cm/3.52cm(p<0.001)、足部外転角度:14.0度/13.8度(p=0.87)であった。DRF群は、有意に接地角度が小さく、外回し距離が大きかったが、他の項目においては有意差を認めなかった。</p><p>【結論】</p><p>インソール内蔵型の小型慣性センサを用いることで、日常生活空間における歩行計測を行い、DRF患者の歩行を解析した。過去の施設内での計測と同様に接地角度はDRF群において減少を認め、接地時の背屈力の低下とつまずきや転倒との関連が示唆される。一方、外回し距離は、日常生活空間における歩行でのみDRF群で大きかったが、両群間のわずかな差が無意識の歩行によって顕著に現れた可能性があり、インソール内蔵型の慣性センサを使用した歩行解析の有用性が示唆された。今後の転倒予測スクリーニング、二次骨折予防に向けて応用を目指したい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は研究代表者が所属する医療機関の倫理委員会の承認(承認番号M2020-365)を受けて実施した。全ての対象者は、ヘルシンキ宣言に則り研究参加前に研究の目的と個人情報の守秘義務について説明を受け、同意した上で本研究に参加した。</p>

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