睡眠時無呼吸症候群用口腔内装置装着時における顎運動の検証

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  • Verification of mandibular movements in the state of wearing an oral appliance for obstructive sleep apnea syndrome

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抄録

<p>閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の治療法の1 つである口腔内装置(OA)1〜4)は主に上下完全固定型(以下,固定型OA)と上下分離型(以下,分離型OA)に大別される.固定型OA では上下マウスピースを完全に固定し,顎運動が制限されるため違和感が危惧されるのに対し,分離型OA は下顎の開口や側方運動がある程度許容されるという利点がある.一方,装置の効果という点においては,開口の許容が不利になる可能性5, 6)もあることから,開口時の顎位については 十分に検証する必要がある.しかし,実際の分離型OA の装着時の下顎移動方向や範囲について精密に調べた研究は見当たらない.そこで,本研究では,下顎運動測定器を用いて分離型OA 装着時の下顎の移動方向と移動距離を検証した.<br>対象は任意に参加した健常被験者12 名である.前方移動量は被験者の最大前方移動量の65%前方位と設定し7),前歯部での咬合挙上量は5〜6mm の範囲に設定して2 種類の分離型OA(NK コネクターⅡ,サイレンサーSL)を製作した.下顎運動測定装置はK7 エヴァリュエーションシステムEX(以下,K7)を用いた.下顎運動は,OA 非装着時の習慣性開閉口運動,矢状面内下顎限界運動,および2 種類のOA 装着時の開口運動,矢状面内限界運動とした.解析はK7 により記録された測定データから,1)OA 非装着時矢状面内限界運動時前方移動量,2)OA 非装着時最大開口量,3)OA 装着時の最大前方移動量,4)OA 装着時最大開口量,5)OA 非装着時の習慣性開口運動路とFH 平面のなす角度,6)OA 非装着時の習慣性開口運動路と咬合平面のなす角度,7)OA 装着時開口運動経路とFH 平面のなす角度,8)OA 装着時開口運動経路と咬合平面のなす角度,9)OA 装着時開口運動経路とOA 非装着時習慣性開口路のなす角度,10)OA 非装着時矢状面内限界運動範囲の面積,11)OA 装着時矢状面内限界運動範囲の面積,を計測した.対応のある2 群間の比較にはウィルコクソン符号付順位和検定を用い,有意水準は5%とした. <br>測定の結果,OA 装着最大開口量はNK コネクターⅡにおいて3.2〜14.4 mm,サイレンサーSL において3.8〜14.3 mm であった.OA 非装着時の習慣性開口運動路とFH 平面のなす角度の平均値は108.8〜125.1°,OA 非装着時の習慣性開口運動路と咬合平面のなす角度は89.9〜112.0°であった.OA 装着時開口運動とFH 平面とのなす角度の平均値はNK コネクターⅡにおいて91.2〜115.7°,サイレンサーSL において81.5〜113.9°であり,OA 装着時開口運動と咬合平面となす角度はNK コネクターⅡについて68.3〜100.2°,サイレンサーSL において65.8〜98.3°であった.FH 平面,咬合平面を基準とした場合の習慣性開口運動路と平面のなす角度とOA 装着時開口運動路と平面のなす角度との間には,NK コネクターⅡ,サイレンサーSL のどちらの場合においても有意差が認められた(p<0.05).OA 装着時開口運動経路とOA 非装着時の習慣性開口路とのなす角度については,OA 装着開口運動はOA 非装着時の習慣性開口路に対して前方に角度をなし,NK コネクターⅡにおいて2.8〜28.3°,サイレンサーSL において6.9〜40.8°であった.いずれの被験者においてもNK コネクターⅡ,サイレンサーSL ともにOA 非装着時の習慣性開口路に対して前方へ向かう経路を示した.下顎限界運動面 積は173.2〜494.3 mm2,OA 装着限界運動面積はNK コネクターⅡにおいて9.3〜43.1 mm2,サイレンサーSL において7.2 〜49.7 mm2 であった. <br>以上のように,解析の結果,NK コネクターⅡ,サイレンサーSL ともに開口時の顎位は習慣性開口路に対して前方へ向かう経路を示すことが明らかとなった.対象とした分離型OA の連結様式では,開口時でも下顎位は気道を狭くする後方へ移動する可能性は少ないものと考えられた.また,OA 装着時,開口は可能であるが,許容される開口量は小さいことはわかった.これらの顎運動経路の特徴は,開口運動による中咽頭の狭窄作用を生じづらくするものと考えられ,装置の構造として合理的なものと考えられた.<br><br>注:本文中の文献番号は,英論文中の文献番号と一致する.<br><br>※内容の詳細は英論文になります.</p>

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