親の小児期逆境体験が次世代の精神病理に与える影響に関する研究の現状と課題

DOI Web Site オープンアクセス
  • 石川 惠太
    東京大学大学院教育学研究科
  • 東 菜摘子
    東京大学大学院教育学研究科
  • 大賀 真伊
    東京大学大学院教育学研究科
  • 滝沢 龍
    東京大学大学院教育学研究科 英国ロンドン大学精神医学・心理学・神経科学研究所

書誌事項

タイトル別名
  • Intergenerational Effect of Parental Adverse Childhood Experiences on the Next Generation's Psychopathology: A Literature Review
  • オヤ ノ ショウニキ ギャッキョウ タイケン ガ ジセダイ ノ セイシン ビョウリ ニ アタエル エイキョウ ニ カンスル ケンキュウ ノ ゲンジョウ ト カダイ

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抄録

<p>一般的に被虐待経験と家族機能不全から構成される小児期逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)を経験した個人は,精神病理のリスクが高まることが多くの研究で実証されているが,次世代の精神病理に与える影響に関する研究は少ない。本レビュー論文は,(1)親のACEsと子どもの精神病理の関係および,(2)両者を関連付ける妊娠中・出産後における媒介変数・調整変数の役割を,被虐待経験のみに焦点を当てた研究との異同を踏まえて検討した。6つの検索エンジンを利用し,16本の研究が抽出された。(1)親のACEsと子どもの精神病理との関連では,問題行動・外在化問題で一貫して有意な関連を示したが,内在化問題では一貫しない結果が確認された。親のACEsと被虐待経験に関する研究を比較した結果,親のACEsと子どもの精神病理との関係において大きな差異は確認されなかった。(2)媒介変数・調整変数については,母親の妊娠中の生物学的要因・心理社会的要因や,出産後の心理的問題,養育の媒介効果が主に確認された。これは,被虐待経験の研究結果と同じ傾向を示し,逆境が被虐待経験であれACEsであれ,心理社会的な変数は頑健な媒介効果を示すことが示唆された。今後の展望として,(1)多重被害の観点からより包括的な逆境を測定すること,(2)妊娠中の要因を検討することを挙げることができる。</p>

収録刊行物

  • 発達心理学研究

    発達心理学研究 33 (2), 89-103, 2022

    一般社団法人 日本発達心理学会

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