グミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量と篩分法による咀嚼値との関係

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  • Relationship between the amount of glucose eluted during chewing ofgummy jelly and masticatory value obtained using the sieving method

抄録

<p>咀嚼能力は,咀嚼機能を客観的に評価するための重要な指標に挙げられており,咀嚼能力の測定方法には,篩分法が古くから用いられている.この方法は,操作が煩雑で,かつ分析に時間がかかることが難点となっている.そこで,さまざまな食品を用いた簡便な方法が開発され,臨床応用されている.これらのうち,グミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量を測定する方法は,物性や形状を規格化でき,衛生管理が簡単で,操作や分析が容易であるという特徴を有しており,健常有歯顎者1〜4),高齢者4〜7),可撤性部分床義歯患者8〜10), 全部床義歯患者11〜13), インプラント義歯患者8, 14, 15)などを対象に広く用いられるようになってきている.また,咀嚼能力には性差があることが明らかにされている16). <br>著者らは,グミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量の測定による咀嚼能力と篩分法による咀嚼能力(咀嚼値)との間に正の相関が認められることを報告17)した.しかしながら,この時のグミゼリーは,現在市販されているグミゼリーとは成分がかなり異なっていること,男女を区別せずに行っていること,サンプルサイズが小さい(男女各10 名)ことなどの問題点があった.<br>そこで,本研究ではグミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量と篩分法による咀嚼値との関係を明らかにするため,健常者206 名(男性107 名,女性99 名,21〜36 歳,平均年齢24.8 歳)にグミゼリーを20 秒間咀嚼させた時のグルコースの溶出量とピーナッツ3gを20 回咀嚼させた時の篩分法による咀嚼値を算出し,性差に考慮して男女別に両者の関係を調べた.<br>グルコースの溶出量は,グミゼリー(GLUCOLUMN,GC 社)を咀嚼後,10 ml の水を含み,濾過付コップに吐き出させて濾液を採取後,この濾液のグルコース濃度をグルコース測定装置(GS-Ⅱ,GC 社)で測定した.咀嚼値は,ピーナッツ咀嚼後,500 ml のコップに吐き出させ,それを流水下で10 mesh 篩(1.694 mm 篩)で篩い分けし,篩上の残留ピーナッツを80℃で24 時間恒温乾燥機内で乾燥後,秤量した.得られた秤量値から篩を通過した重量を求め,篩を通過した重量の全重量に対する百分率を求めた.<br>グルコースの溶出量と咀嚼値は,どちらも男性のほうが女性よりも大きく,男女間に有意差が認められた(表1).また,咀嚼値は男性の88.8 %(107 名中95 名),女性の83.8%(99 名中83 名)が80% 以上を示した.男女ともにグルコースの溶出量が多くなるに従って咀嚼値が大きくなる傾向を示した(図1).回帰分析の結果,咀嚼値とグルコースの溶出量との関係は,直線回帰よりも2 次曲線や対数曲線などの曲線回帰のほうが重相関係数と決定係数が大きく,適合していた(表2).<br>男性は女性よりも咀嚼時の運動量が大きく18〜20),サイクルタイムが短い18〜20)こと,咀嚼能力が高い1, 21〜24)ことが報告されている.したがって,これらの指標の分析に際し,性差に留意することが示唆されている20, 22).本研究の結果では,グミゼリー咀嚼時のグルコースの溶出量と篩分法による咀嚼値のどちらも男性のほうが大きく,男女間に有意差が認められ,これまでの報告と一致した.ただし,咀嚼値においては,p 値が0.043 であり,グルコースの溶出量(p=0.002)に比べて男女間の差の検出力が小さかった.これは,男性と女性の咀嚼値(平均値±標準偏差)が90.1±9.2 と87.2±11.1 であり,かつ男性の88.8 % と女性の83.8 % が80 % 以上を示したことから,天井効果まではいかないものの,参加者の多くがかなり高い咀嚼値を有しているため,両者の差異が生じにくかったものと考えられる.<br>咀嚼値を従属変数,グルコースの溶出量を独立変数として回帰分析を行った結果,両者間には有意な関係が認められ,男女ともに直線回帰よりも2 次曲線や対数曲線などの曲線回帰のほうが適合していた. </p><p>これは,上記のように参加者の多くが高い咀嚼値を有意していることに起因しているものと考えられる.しかしながら,線形回帰の重相関係数と決定係数は0.708 と0.501 と高かった.これはグルコースの溶出量の変化に比例して咀嚼値も変化すること,線形回帰でも十分に適合していることを示していると考えられる.<br>本研究の結果,グルコースの溶出量と咀嚼値との間には有意な関係があること,直線回帰よりも曲線回帰のほうが適合していることが示唆された.<br><br>注:本文中の文献番号は,英論文中の文献番号と一致する.<br><br>※内容の詳細は英論文になります.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390296498037697152
  • DOI
    10.34420/jjaoh.29.1_25
  • ISSN
    24352853
    13442007
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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