外傷に起因すると考えられる肩関節の病態に鍼治療が有効であった 1 症例

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  • ガイショウ ニ キイン スル ト カンガエラレル カタカンセツ ノ ビョウタイ ニ シンチリョウ ガ ユウコウ デ アッタ 1 ショウレイ

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抄録

【はじめに】日常の臨床において、肩関節疾患はよく遭遇するものの 1 つである。退行性変性を基 盤とする疼痛や可動域制限を訴えるものが多いが、今回は外傷に起因した肩関節の疼痛と二次性 に発生したと思われる肩関節可動域制限に対して鍼治療が奏功した症例を報告する。<br> 【症例】53 歳 女性 公務員(デスクワーク)<br> 【主訴】左肩関節痛 <br> 【現病歴】20XX 年 2 月に頸肩部の凝りの治療として整体で「肩甲骨はがし」を受療し途中で苦痛を伴う嫌な痛みを自覚した。直後から左手の力が入らなくなり肩の外転不能となった。その 2 週間後から徐々に寛解するも、現在も有痛性の可動域制限が続く。<br> 【陽性所見 異常所見】ROM 左肩関節:屈曲・外転:90°、内旋:30°、外旋:20°、左肩関節運動時痛:屈曲・外転・内旋、左肩関節抵抗筋力テスト:外転・内旋、外旋、結帯動作・ドロップアームテスト・エンプティカンテスト<br> 【評価】外傷による腱板損傷が起こり、それに起因しインピンジメントも発症した可能性が疑われ た。<br> 【治療】1 診目:血流改善による動作時の疼痛緩和、組織損傷の回復を目的に疼痛部位 ( 烏口突起周辺、棘上筋腱移行部 ) に置鍼、6 診目以降から、疼痛性筋力低下が消失したため、回旋筋腱板構成筋 ( 棘 上筋・棘下筋)、伸張痛のある筋 ( 棘下筋・三角筋後部線維・菱形筋 ) へ1Hz、15 分の鍼通電を施行した。<br> 【結果】初診から約 5 ヵ月間に計 9 回の鍼治療を行い、水平内転での疼痛 NRS(Numerical Rating Scale) が 8 → 2 へと改善。左上肢水平内転時、左手指 ( 示指、中指 ) が反対側肩峰まで 2cm空いて 届かず、治療後は肩甲棘に届くようになり可動域が改善した。<br> 【考察】腱板損傷の進行度合いを考慮し、置鍼と鍼通電治療により病態を悪化させず、疼痛や可動 域制限の改善を図ることができると考えられる。

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