肺高血圧症を伴う重症大動脈弁狭窄症, 僧帽弁狭窄症に心タンポナーデを合併した1例

DOI
  • 山際 萌里
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 循環器内科
  • 今井 俊介
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 循環器内科
  • 照井 実咲
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 臨床検査科
  • 有田 匡孝
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 循環器内科
  • 畑田 勝治
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 循環器内科
  • 松原 琢
    社会福祉法人新潟市社会事業協会 信楽園病院 循環器内科

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Cardiac Tamponade Complicated by Severe Aortic Stenosis and Mitral Stenosis with Pulmonary Hypertension

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抄録

<p> 心嚢ドレナージによる右心拍出量増加に伴い,肺高血圧と急性肺水腫をきたす心膜減圧症候群が知られている.また,左室機能障害がある症例では心膜減圧症候群を生じる可能性があることが報告されている.</p><p> 症例は84歳女性.前医で心嚢液貯留を伴う大動脈弁・僧帽弁の連合弁膜症による慢性心不全として加療されていたが,呼吸困難感が増悪し当院に救急搬送された.心エコーで右室の拡張期虚脱を伴う多量の心嚢液貯留,重度の大動脈弁狭窄と僧帽弁狭窄,肺高血圧,三尖弁逆流を認めた.心嚢ドレナージを予定したが,心膜減圧症候群をきたすことが懸念されたため,スワン・ガンツカテーテル留置下にドレナージを施行した.ドレナージ直後から肺動脈圧はむしろ低下し,その後,呼吸状態は改善した.本症例では,重症肺高血圧症,三尖弁逆流症のために元々拡大していた右心系が心膜腔内圧の上昇によって圧排されていたが,この状態が心嚢ドレナージによって解除され再度右心系が拡張し,その結果,右室圧が上昇せず,肺動脈圧の上昇をきたさなかったこと,また,同様に僧帽弁狭窄のために拡張していた左房の圧排も減弱し,左房が拡張し,左房圧が低下したことも影響したと考えられた.大動脈弁狭窄症,僧帽弁狭窄症,肺高血圧症,三尖弁逆流症を伴う心タンポナーデの類似症例であっても,それぞれの弁膜症の重症度によって病態が一様にはならないことが考えられる.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 54 (7), 791-796, 2022-07-15

    公益財団法人 日本心臓財団

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