野生の仮面

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タイトル別名
  • Wild mask:
  • Hormonal changes in male orangutans during flange development
  • -オランウータンのオスにおけるフランジ発達中のホルモン動態

抄録

<p>【序論】霊長類の中でも性的二型が顕著であるオランウータンでは、オスの顔に大きく出っ張った頬ひだ(フランジ)が発達する。先行研究からフランジ発達中のオスでいくつかの種類の尿中ホルモンレベルが大きく上昇することがわかっている。しかしいずれも横断研究であったことから、同じ個体の発達を継続して追った縦断的な研究例はこれまでなかった。【方法】本研究では国内3ヶ所の動物園による協力のもと、スマトラオランウータンのオス1個体(11歳から13歳)とボルネオオランウータンのオス1個体(12歳から19歳)を対象として、顔形態の変化とホルモン濃度動態を調べた。正面から撮影された写真をもとに顔形態の相対比率を測定し、フランジサイズの変化を評価した。また定期的に採取した尿中のテストステロン、コルチゾール、成長ホルモンの濃度を酵素免疫測定法により測定した。加えて尿中クレアチニン濃度と尿比重を測定してホルモン濃度補正と除脂肪体重の推定に用いた。【結果・考察】フランジ発達開始年齢は個体間で異なり、これには父親や他のフランジオスから離れた時期の違いが影響した可能性があった。テストステロンとコルチゾールはフランジ発達開始時期に大きく上昇を見せたものの、その後の発達期間中に安定せず変動を示した。推定除脂肪体重がフランジ発達の変化点直前から上昇したため、フランジとともに体重の増加も起きていると考えられる。しかし筋肉や骨の成長を促す成長ホルモンはフランジがある程度成長した段階から遅れて上昇したため、フランジの発達が優先されている可能性が考えられる。2個体による結果ではあるものの、本研究の成果はオランウータンのオスの繁殖戦略にとって重要なフランジという二次性徴が筋骨格に先んじて発達する可能性を示唆するものである。また従来、野生下でも指摘されてきたように社会的状況の変化がフランジ発達のトリガーとなっている可能性を示すものである。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390296896142709888
  • DOI
    10.14907/primate.39.0_37_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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