<論説>前世紀転換期ドイツにおけるユグノーの末裔による歴史叙述 --歴史家アンリ・トランとドイツ・ユグノー協会--

書誌事項

タイトル別名
  • <Articles>Historiographie eines Hugenottennachkommen in Deutschland um die letzte Jahrhundertwende. Historiker Henri Tollin und der Deutsche Hugenotten-Verein
  • 前世紀転換期ドイツにおけるユグノーの末裔による歴史叙述 : 歴史家アンリ・トランとドイツ・ユグノー協会
  • ゼン セイキ テンカンキ ドイツ ニ オケル ユグノー ノ マツエイ ニ ヨル レキシ ジョジュツ : レキシカ アンリ ・ トラン ト ドイツ ・ ユグノー キョウカイ

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抄録

一七世紀にフランスから宗派難民としてドイツ語圏へ定着したユグノーと呼ばれる人々の子孫は、近代にあって祖先の過去を顧みるとき、如何なる歴史を描いたのだろうか。本稿は、ドイツ・ユグノー協会(DHV)の筆頭創設者アンリ・トランと、彼を主筆とする雑誌『ドイツ・ユグノー協会歴史叢誌』(GDHV)を事例に、民族的・宗派的少数派としての帰属意識を強く持つ歴史家が時代状況に対応しながら、どのような論理で自己表現と意見表明を図ったのかを明らかにした。批判的歴史研究の作法を標榜するトランは、同時代の学問動向を睨みつつ、ユグノーの末裔たちが組織的に史料を蒐集・公開できる環境を構築した。また、多くのユグノーたちが祖先の系譜を忘却する中で、彼らの記憶を道徳的価値観と結び付けて喚起・保存しようとした。この二つの傾向を繫ぎ止めていたのが、誠実な歴史叙述こそが「敬虔」の業、すなわち信仰実践だという考え方である。

収録刊行物

  • 史林

    史林 106 (2), 378-413, 2023-03-31

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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