本質因としてのkṛtakatva

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タイトル別名
  • <i>Kṛtakatva</i> as <i>Svabhāvahetu</i>
  • Krtakatva as Svabhavahetu

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説明

<p> “kṛtakatva”は,Nyāyabindu第三章やHetubinduにおいて,本質因の論証例を提示する際に繰り返し用いられ,本質因の中でも代表的なものとして知られている.しかし,これまで“kṛtaka”という語の意味が詳細に検討されることはなかった.ダルマキールティは「“kṛtaka”は,自身の原因のみから,瞬間的なもの[すなわち]一瞬間存在するという性質をもつもの,そのようなものとして生じる」(Pramāṇavārttikasvavṛtti ad Pramāṇavārttika 1.27)と述べる.このうち「自らの原因のみから生じる」という点が,本質因の下位分類において“kṛtakatva”を区分する際に重要な役割を果たしている.本稿では,本質因およびその論証式の分類を説くNyāyabindu 3.12, Pramāṇaviniścaya 2.52cdに対するダルモーッタラの註釈を主要資料として“kṛtaka”という語の意味を検討する.</p><p> ダルマキールティが規定する三種の本質因のうち,“kṛtakatva”は外的な原因を限定者とする分類に属している.“kṛtaka”という語には,その分類の根拠となる限定者を表述する語が適用されないが,自らの生起に際して他のものの働きに依存する存在物のみが“kṛtaka”と呼ばれ,当該の語には「他のものの働き」という限定者がすでに含まれている.ダルモーッタラによれば,そのような語を述べるときには,「原因によって」といった限定者を述べる語を適用してはならない.このことは,ka接辞を伴わない“kṛta”との対比によって説明され,“kṛta”の場合,話者が述べなかったとしても限定者は間接的に了解されるという.同じ分類に属するほかの本質因と合わせ,〔1〕限定者を表述する語が適用される本質(pratyaya­bhedabheditva, prayatnānantarīyakatva),〔2〕限定者を表述する語の適用が任意である本質(kṛta[tva], kāryatva),〔3〕限定者を表述する語が適用されない本質(kṛtakatva)と区分できる.</p><p> 以上のような解釈がなされた背景として,“kṛtakatva”のみを論証例として挙げるNyāyabinduに対し,Pramāṇaviniścayaでは偈文で“kāryatva”という論証因が例示される.このことから,ダルモーッタラはka接辞を伴わない語形についても論じる必要があった.ダルマキールティが挙げた“kṛtaka”と“kārya”という二つの語には,いずれも限定者を述べる語は適用されていないが,その解決方法には限定者が含まれるか了解されるかという違いがある.ダルモーッタラは,Pramāṇaviniścayaṭīkāでは“kṛta”と“kṛtaka”の相違により重点をおいた解説をしており,論証例として表れる語の違いに応じて註釈者の視点が異なる点は興味深い.</p>

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