『経集』における『般若経』の引用について

  • 王 俊淇
    Associate Professor, ISBRT, Renmin University of China

書誌事項

タイトル別名
  • The <i>Prajñāpāramitā-sūtra</i> as Quoted in the <i>Sūtrasamuccaya</i>
  • The Prajnaparamita-sutra as Quoted in the Sutrasamuccaya

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抄録

<p> 『経集』(Sūtrasamuccaya)は,主に大乗経典からの抜粋集であり,中観派の祖であるナーガールジュナ(2世紀頃)の著作とされている.『経集』のサンスクリット写本が発見されて以来,『経集』とそこに引用されている経典についてのより詳細な研究が可能になった.一般に,『経集』のようなアンソロジーにおける引用文は,他の形式の経典転写に比べて,より引用元の経典の古形に近い傾向がある.経典転写の過程では,写経者が意図的・非意図的に原文に手を加え,訂正や挿入を行うことで,本文が徐々に変化していくことがある.これとは対照的に,『経集』に引用された経典は,『経集』が編纂された当時の姿を伝えている.したがって,現存する他の資料と『経集』の該当箇所のテキストを比較することで,これらの抜粋箇所に関する有益な情報が得られるのみならず,『経集』の成立年代や作者について推測することも可能であろう.『経集』に引用された経典のうち,『般若経』は15回も引用されており,最も頻繁に引用されている大乗経典である.本論文では,『経集』に引用された15回の『般若経』をサンスクリット語,漢訳,チベット語訳の『般若経』文献,および鳩摩羅什訳『大智度論』の注釈と比較検討することで,その典拠に関するBikkhu Pāsādika(1978)の主張を修正し,これらの抜粋を『般若経』の文学的文脈の中で位置づけ直す.</p>

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