高解像度衛星画像分析による南部アフリカ初期国家の形成過程の検討

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  • Investigation of Early State Formation Process in Southern Africa by High-Resolution Satellite Imagery Analysis

抄録

<p>1.研究目的</p><p> 本研究は南部アフリカに繁栄したマプングブエ(Mapungubwe)王国(AD1250-1300年)遺跡の地表データについて,高解像度衛星データを活用したリモートセンシング技術によるマッピングとフィールドワークを実施することで,初期国家の形成過程,都市機能,王権ネットワークを明らかにし,従来の国家・都市概念に一石を投じることを最終的な目標としている. 同王国はK2文化(AD1000-1220年)を受け継ぎ,グレート・ジンバブエ王国(AD1300-1450年)に引き継がれた初期国家であり,中心部は南部アフリカ最古の都市と言われている(Huffman 2005).南部アフリカでは集権国家と非集権的自給社会(国家に抗する社会)との関係解明が課題であったが,広範囲の発掘調査は難しく,それを実証する空間的把握は困難だった.南部アフリカ最古の都市を持ち,金を産出し,アジア交易で繁栄した同王国が自給社会といかなる関係を構築したのかを地理空間的に明らかにすることは,アフリカ史に大きな貢献となる.</p><p></p><p>2.調査方法</p><p> 考古学(Huffman 2005; Chirikure 2021)及び気候学,土壌学(Nxumalo 2019)分野等の先行研究の論点を整理し,人口,一般人の居住地区,王国衰退の要因,交易ルートの解明など本研究が貢献できる課題を整理した.これを踏まえ2022年12月より高解像度衛星画像分析を開始し,マプングブエ王国の中心機能が位置した現在の「マプングブエ国立公園」周辺について,陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」による2.5mまたは5mの解像度のDSM(地表表層モデル),「WorldView-2」による0.5メートルの解像度の可視画像の判読を用いて3次元地図を作成,遺構の残存状況をマッピングし地形条件を検討した.また2023年3月にフィールドワークを実施し,グランドトゥルースを行った.</p><p></p><p>3.結果および考察</p><p> 高解像度衛星画像の分析と現地調査により実施しマプングブエ遺跡の中心となる貴族階級が暮らした丘の部分および一般人が居住したとされている丘の周辺等の地形的条件を明らかにすることができた.また広域の地形図の作成と検討から先行研究で指摘されていたリンポポ川を経てインド洋沿岸の港(チブエネ遺跡)に至るルートに関し地形学的に補完できることを明らかにした.</p><p> 今後はドローンによる大縮尺の空中写真を撮影,地上基準点のGNSS測量を実施し,得られた地形情報をもとに10cm程度の解像度のDSMを作成し,遺構と地形条件を高精度で検討する予定である.衛星画像の解析および現地調査で得られた情報については,GISを用いて統合する.当地には,リンポポ川および支流によって形成されたテーブル状の地形が存在する.こうした自然条件に都市機能がどのように配置され,および周辺との結びつきができていたのかをリモートセンシングおよびフィールドワークによって解明したい. 同王国の都市機能への注目は,都市と農村という二分法に基づいた西洋中心的な都市概念を再考する契機となると考えられ,王権中枢部の都市と非集権的自給社会との関係を明らかにすることで都市研究の理論的発展にも貢献できる.衛星画像の分析により,地形分析,都市の構造物の判読,市壁の役割の再分析,住居址や家畜囲いの特定,鉱山跡の特定,そしてこれらの広域マッピングを行うことで冒頭の研究目的を達成したいと考えている.</p><p></p><p>引用文献</p><p>Chirikure, S. 2021. Great Zimbabwe: Reclaiming a ‘Confiscated’ Past. London & New York: Routledge.</p><p>Huffman, T. N. 2005. Mapungubwe: Ancient African Civilization on the Limpopo. Johannesburg: Wits University Press.</p><p>Nxumalo, B. 2019. Integration geoarchaeological approaches and rainfall modelling as a proxy for hydrological changes in the Shashe-Limpopo basin, South Africa. South African Archaeological Bulletin 74(211): 67-77.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390297603758353152
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_121
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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