新潟県村上市小岩内周辺における1967年と2022年の豪雨に伴う崩壊の分布からみた斜面崩壊の免疫性

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  • Immunity to landslides based on the distribution of landslides induced by 1967 and 2022 heavy rainfall around Koiwauchi, Murakami City, Niigata Prefecture

抄録

<p>1.はじめに 斜面崩壊の免疫性とは,斜面崩壊が一度発生すると,同じ地点において崩壊が再発しないという考え方である(小出 1955)。免疫の有無やその有効期間を明らかにすることで,斜面崩壊の発生場所の予測や発生の切迫度の推定が可能となることから,斜面崩壊の免疫性に関する研究が多数行われてきた(安仁屋 1968;下川 1983など)。近年では,GISの普及に伴い,二つの時期に発生した斜面崩壊の地理的な分布を定量的に分析することで,免疫性の検証が行われている(岩橋・山岸 2010;檜垣ほか 2019;Yano et al. 2019;岩佐 2022)。ただし,検証事例は限られており,地域的な差異を検討するためにも多数の事例の蓄積が必要であると考えられる。 2022年8月3日から4日にかけて,新潟県や山形県を中心に複数の地点で24時間降水量が観測史上最大となる豪雨となり,新潟県村上市小岩内では多数の斜面崩壊が発生した。小岩内では1967年羽越豪雨の際にも斜面崩壊に起因する土石流が生じていたことが報道された。1967年と2022年の斜面崩壊の分布を明らかにし,比較することで斜面崩壊の免疫性に関する定量的な検討が可能になると考えられた。 本発表では,1967年と2022年の豪雨に伴い多数の斜面崩壊が発生した新潟県村上市小岩内周辺を対象に,55年間における斜面崩壊の免疫性を検証した。</p><p>2.研究方法 対象地域は新潟県村上市小岩内周辺の朴坂山から荒川左岸までの12.575km2の範囲である。荒川右岸には新第三紀堆積岩類と流紋岩類,花崗岩類が分布し,左岸には花崗岩類と新第三紀堆積岩類が分布する。1967年の斜面崩壊の分布を明らかにするため,1971年に国土地理院が撮影した空中写真を実体視判読した。また,2022年の斜面崩壊の分布を明らかにするため,朝日航洋がオープンデータとして公開したオルソ画像および航空レーザ測量データから作成した地形表現図を判読した。判読した斜面崩壊の特徴を明らかにするために,地形条件や地質条件,降水量と斜面崩壊の発生密度との関係を検討した。 また,判読した斜面崩壊の分布を比較し,1967年から2022年までの55年間で斜面崩壊の免疫性が保たれているかを検証した。この際,2022年の崩壊源から1967年の崩壊源までの最短距離を求め,両者がどの程度近接して発生したかを明らかにした。また,檜垣ほか(2019)に基づいて崩壊源同士の位置関係を5つに分類し,2022年の斜面崩壊のうち,どの程度が1967年の斜面崩壊と重なって発生したかを検討した。</p><p>3.斜面崩壊の特徴 対象地域では1967年の豪雨で362個,2022年の豪雨で1,000個の斜面崩壊が発生したことが明らかになった(図)。1967年の斜面崩壊は荒川右岸に多く分布し,2022年の斜面崩壊は嶽薬師以南に多く分布する。ただし,嶽薬師の西・南斜面では分布が限られる。また,最大24時間降水量ごとに斜面崩壊の発生密度を集計すると,いずれの斜面崩壊でも440 mm/24h以上で発生密度が大きい。地質ごとに発生密度を集計すると,新第三紀堆積岩類で最も大きく,ついで花崗岩類で大きい。</p><p>4.斜面崩壊の免疫性 2022年の崩壊源から1967年の崩壊源までの最短距離とその個数を集計すると,最短距離が短くなるにつれてその個数が増加し,20–30 mのもので106個と最も多い。一方で,最短距離が0-10 mのものでは28個とその数が急減する。崩壊源同士の位置関係をみると,2022年の斜面崩壊のうち90.8%は1967年の崩壊とは独立して発生し,ついで4.7%は同じ一次谷の上方で発生している(図)。同一の一次谷で斜面崩壊が再発したものは10%未満であり,少なくとも55年間では免疫が保たれているとみなせる。</p><p>文献:安仁屋(1968)人文地理 20.岩佐(2022)地理学評論 95.岩橋・山岸(2010)日本地すべり学会誌 47.小出(1955)『山崩れ』.下川(1983)林業技術 496.檜垣ほか(2019)日本地すべり学会誌 56.Yano et al. (2019) Geomorphology 327.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390297603758375296
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_23
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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