都道府県によるSNS活用の地域差

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タイトル別名
  • Regional differences in SNS use by prefecture
  • Information dissemination in Chinese
  • ―中国語による情報発信―

抄録

<p>Ⅰ 研究背景と目的</p><p>2000年代初頭からのSNSの普及により、自治体の観光施策におけるSNSでの情報発信の重要性が高まっている。とりわけ、個人旅行で訪日する外国人観光客は、旅行前に SNS を通じて観光情報を入手し、収集した観光情報に基づき旅行計画を立てる傾向にあることが指摘されている。中でも、訪日中国人観光客は、国外サイトへのアクセスのしづらさや、中国語情報への指向性から、公的な主体による中国語SNSでの情報発信を窓口として活用することが多い。 本研究では、中国における同種のSNSにおけるシェアと、日本の多くの都道府県がアカウントを作成し情報発信に活用している点から、中国語SNSである微博(ウェイボー)を研究対象とする。また、情報発信の地域差を全国的に比較するため、都道府県が主体となるアカウントを研究対象とする。</p><p>Ⅱ 都道府県による中国語SNSの利用実態</p><p>各都道府県が中国市場向けに観光情報を広める窓口としての微博公式アカウントは、2011年は16都府県、2016年は33都道府県、2022年時点では40都道府県で開設されている。また、2022年時点での都道府県公式アカウントのフォロワー数は(図1)、訪日中国人観光客の最も多い大阪が12.9万人(都道府県別のフォロワー数3位)、東京が7.6万人(同8位)になる。一方、2019年訪日中国人観光客数が全国35位(2.45万人)に過ぎない青森県が、フォロワー数では全国でも最も多い130.2万人となる。青森県は2011年から微博の情報発信に力を入れており、2019年の訪日外国人観光客の伸び率が最も高い。また、2019年訪日中国人観光客が全国37位(1.33万人)の鳥取県も、フォロワー数は11.6万人で東京都を抜いて全国5位になる。鳥取県では、2017年に開設した微博のほか、中国の同種のSNSである、微信(2019年開設)、小紅書(2021年開設)も活用するなど、積極的にSNSを活用した観光情報発信を行っている。</p><p> Ⅲ 分析結果と考察</p><p>SNSを活用した情報発信は、従来のプロモーションと比べ、低コストで拡散しやすく、認知度向上につながり、海外展開もしやすいという特徴がある。地方都市である青森県や鳥取県にとって、海外市場の拡大や外国人観光客の誘致を目指すのであれば、低コストで拡散性の高いSNSを積極的に情報発信に活用することが有効である。また、都道府県によるSNSのフォロワー数地域特性は、大阪府と北海道を除いて、中国人観光客に人気のある主要都市は、公式フォロワー数が多くない.つまり、訪日中国人観光客が少ない、観光地として知名度が低い地域の方がフォロワー数が多い傾向にあると言える。もちろん、SNSを活用する直接的な目的は、外国観光客の誘致や地域経済の活性化であり、大都市も中小都市も同じである。従って、大都市、小都市を問わず、SNSは観光に有効であると考えるが、PR予算、関係機関、インフラなどの前提条件の違いから、SNSは大都市の知名度を上げ、観光客を誘致する手段の一つに過ぎないのに対し、地方都市にとってSNSは海外からの観光客とつながる重要な窓口である。 地方都市が観光による地域活性化を目指すのであれば、青森県や鳥取県のようにSNSを積極的に活用するのも良い方法だろう。なお、投稿内容による大都市と地方都市の差異については今後検討していく必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390297603758388224
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_56
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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