大佐渡山地北西斜面の風衝地における植生と冬季温度環境の関係

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タイトル別名
  • Relationship of vegetation to winter temperature environment on the windswept area of northwest-facing slope, Ohsado Mountains

抄録

<p>はじめに:山頂現象は,冬季季節風及びそれに伴う積雪状況,温度環境の変化を主な要因として,山頂付近とその周囲で異なった植生が成立していることを示す現象である。 本現象は,標高1,000m程度の佐渡島北西部大佐渡山地においても指摘され,尾根部では冬季季節風による影響で高山帯に類似した植生が成立している(目代・小泉 2007)。 さらに,大佐渡山地北部では,尾根部ではなく,北西斜面上でも同様の植生の成立が報告されている。蒲澤(2021)はこの斜面上での植生の成立を,山頂現象と同様に冬季季節風による影響であるとし,内部での植物の住み分けに関しては,冬季季節風が生む積雪の不均一性とそれに伴う凍結融解による微地形や土壌の変化に影響を受けている可能性を指摘した。しかしながら,この分析は必ずしも植物の住み分けに応じた分析を行っていないほか, 凍結融解作用と冬季における地表面の温度条件を左右する雪の作用についての議論は行われておらず,詳細な比較は十分でないと考えられる。 細渕ほか(2023)では,大佐渡山地北西斜面の風衝地における植生分布の特徴を整理し,植物の住み分けに応じた微地形,表層の土壌条件との比較を行った。本発表では,2022年8月から2023年5月まで実施した地温及び気温の結果から植物の住み分けと温度環境の対応を考察した。</p><p>調査方法:調査地域においては,植被の状態及び植物種に応じて,微地形などによる違いが顕著であるため,それに合わせ,異なる条件下の6地点に地温計を設置した。併せて地温への影響及び対象地域の温度環境を得るため,気温の観測を実施した。また,積雪状況を明らかにするために,インターバルカメラを設置したが,風の影響により転倒したため,2022年11月9日から同年12月14日迄のデータとなった。</p><p>結果と考察:インターバルカメラにより得られた画像から,研究対象地では12月初旬に初めて積雪が確認された。 地温観測の結果は,12月初旬以降,変化傾向に差異が発生したことから,積雪の有無が影響を及ぼしていると考えられた。無積雪の期間においては,全ての地点において日変化が顕著であり,気温と近い変動を示したが,積雪期間と考えられる時期においては,地点によって日変化に差異が生じた。 地衣類・スゲ類,ハクサンシャクナゲ,ホツツジ,スギのみられた箇所に設置した4地点では,12月初旬より徐々に地温が下がり始め,12月中旬には殆ど日変化を示さず,観測地点によりそれぞれ異なるものの,2023年2月まで約0℃から4℃の中で一定の温度を示していた。 一方で,裸地,シバ類・スゲ類のみられた箇所に設置した2地点では,12月初旬以降も変わらず明瞭な日変化がみられた。中でも裸地で観測した地温は,2022年12月から2023年2月の間の日変化が全地点の中で最も大きく,最低地温は-7.8℃を記録した。 消雪時期は,インターバルカメラが転倒したため,詳細は不明であるが,地温の日変化が殆ど生じなかった時期から再び明瞭となる日を消雪日として捉えた場合,消雪日が早い地点では草本類が優占し,遅い地点では木本類の優占する傾向にあった。このことは,小さなスケールながら積雪深の違いが植物の住み分けに影響を及ぼしている可能性を示唆していると考えられる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390297603758390400
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_78
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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