⾧期化する市街地改造事業地区の再々開発

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タイトル別名
  • Prolonged re-redevelopment in the urban redevelopment project district
  • Focus on the area in front of Hankyu Ibaraki city station
  • 阪急茨木市駅前を対象に

抄録

<p>2006年に桑名市で全国初の市街地再開発事業区域における再々開発が行われてから現在にかけて、全国的に再々開発が検討されている。1969年に都市再開発法が制定され「市街地再開発事業」は数多く行われたが、現在まで50年近くが経過しており、建造物の老朽化や機能の低下から再整備が求められている。しかし、それ以前の1961年に制定された市街地改造法に基づく「市街地改造事業」(以下本文中、改造事業)実施地区における再々開発が依然として進まない実態が存在する。そこで本研究は、改造事業地区における再々開発計画が長期化する理由を検討する。具体的には改造事業の実施地区の現状を確認したうえで、阪急茨木市駅前を事例に関係者へのインタビューや各種資料から再々開発が長期化する理由を明らかにする。改造事業は1969年の法の廃止まで16地区で行われた。現在そのうち4地区において再々開発や再開発ビルの建替えといった再整備が実施済みであり、3地区で再々開発が検討されている。実施済みの4地区のうち2地区は神戸市で行われているが、これは地震によりビルが倒壊したためである。そのためこの2地区を除いた残り2地区(A, B)に焦点を当てる。これらは両者とも民間による任意建替えである。Aについてはビルにキーテナントはなく規模が小さかったため商業的再開発は難しかったとされ、共同住宅へ建替えられた。こちらについては従前建物の権利者が少なかったと想定され、建替えのハードルが下がったと考えられる。Bについては民間の不動産業者が区分所有権をすべて買い取り、ビル全体が民間のものとなった後に建替えられた。A, Bともに中心市街地に近くはあるものの駅前ではなかったことから行政としても再整備に関わる動機がなく、任意建替えとなったと推定される。一方で現在再々開発が計画されている地区はいずれも主要駅前であり、権利者数は100名を超える。これらの点が再々開発の進捗に関与していると想定される。以下では阪急茨木市駅前を事例に再々開発が長期化する原因を検討する。大阪府茨木市の阪急茨木市駅前市街地改造事業は1967年に計画が決定され、1970年に完成した。2008年ごろから再開発ビルの建替えの検討がなされ、2014年に建替え推進決議が可決された。その後2020年にビル周辺を含めた整備案が発表されるも2022年に案が見直され、計画に遅れが発生している。建替えの計画について、当初から任意建替えの方針はなく、市街地再開発事業ありきで進められてきたこともあり、建替え費用の積立はなされていなかった。積立が行われていなかったのは1983年に区分所有法が改正されるまで建替えに関する規定がなされていなかったことも影響していると考えられ、これはすべての改造事業地区で発生しうる問題である。遅れについては行政とビル管理組合や不動産会社・コンサルタントとの思惑の違い、そして住民や都市計画審議会での納得が得られなかったことが理由である。以上から再々開発が困難な要因として、一つ目に権利者の数が多いことが考えられる。権利者の数が増えると民間のみでの再整備のハードルは上がる。二つ目には管理体制の未整備が挙げられる。また計画が長期化する要因としては、中心地であることから都市計画において重要な立ち位置であり行政が関与するが、ビル所有者は早期の建替えを望み、民間事業者は事業の成立を求めるため、すべてにおいて納得の得られた計画を立てることが難しい点が挙げられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390297603758412288
  • DOI
    10.14866/ajg.2023a.0_81
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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