小児多発性硬化症に対してfingolimod hydrochloride(FTY720)が有用であった1例

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  • A case of pediatric multiple sclerosis treated with fingolimod hydrochloride (FTY720)

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抄録

<p> 成人の多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)に対して疾患修飾薬の有効性が報告されているが,小児MSでの報告は少ない.症例は生来健康な女子.12歳8か月頃より易転倒性,13歳0か月に右眼の見えづらさ,13歳8か月に右上肢のしびれ,14歳0か月に複視と右上下肢のしびれを認めた.初診時の神経所見では錐体路障害と右上肢の筋力低下を認め,Romberg徴候が陽性であった.頭部単純MRIのT2強調画像では両側半卵円中心深部白質,両側脳室周囲白質,右小脳脚に高信号を認めた.髄液検査ではoligoclonal bandが陽性,ミエリン塩基性蛋白が高値であった.1か月以上の間隔を空けた2つ以上の臨床症状と2個以上の脱髄病変を示す時間的かつ空間的多発性を認めたため,再発寛解型のMSと診断した.intravenous methylprednisolone pulse療法で寛解し,その後はprednisolone(PSL)内服を行ったがPSLの漸減開始後2週目に再発した.間隔の短い再発であったため,14歳6か月よりfingolimod hydrochloride(FTY720)連日内服を開始した.2か月後に寛解したがリンパ球減少を認めたためFTY720を中止し,リンパ球数改善後の14歳9か月よりFTY720の隔日内服を再開した.7か月後にFTY720を隔日内服から週5日内服に増量し,PSLを増量することなく1年以上寛解を維持した.疾患活動性の高い小児MSに対してFTY720は選択肢の一つとして有用と考えられる.</p>

収録刊行物

  • 脳と発達

    脳と発達 55 (5), 350-355, 2023

    一般社団法人 日本小児神経学会

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