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- 小俣ラポー 日登美
- 白眉特定准教授
書誌事項
- タイトル別名
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- <Articles>Jesuits as Yamabushi: Japan as Seen by an Enlightenment Thinker
- 山伏に擬せられたイエズス会士 : とある啓蒙思想家から見た日本
- ヤマブシ ニ ギセラレタ イエズスカイシ : ト アル ケイモウ シソウカ カラ ミタ ニホン
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抄録
フランス語の演劇作品『レ・ジャマボ,もしくは日本の僧(Les Jammabos ou les moines japonois)』(1779)は,作者・出版地の記載されない禁書風の体裁をとった書籍である。しかしこれは,シャルル・ジョルジュ・フヌィヨ・ド・ファルベール・ド・カンジェー(Charles Georges Fenouillot de Falbaire de Quingey, 1727-1800)により執筆され,ヌーシャテル出版協会(Société typographique de Neuchâtel, STN)が印刷したもので,同時代には1200冊以上が売買・頒布され,ヨーロッパ中に広く普及した。この作品のタイトルにあるジャマボは,イエズス会の宣教報告などにおいて頻繁に仮想敵として登場した日本の山伏から取られている。演劇は,表面的にはイエズス会の学校演劇のようにも見えるが,その趣旨は学校演劇とは対極の位置にある。内容は,朝鮮・中国・日本が並ぶ架空のアジアを舞台とし,宮廷内の宗教的権力者の競争,皇帝の息子たちと美しい姫をめぐる三角関係などが描かれる。権力と財力の掌握を求めて暗躍するのは,偶像崇拝の徒にして山伏のウランカで,儒教を奉じる中国から来た哲人宰相と敵対している。明らかにこの演劇は,同時代の日本の風俗や生活を忠実に再現しようとはしていない。日本という鑑をプリズムとして,実はヨーロッパの宗教者,ひいてはイエズス会のあり方が批判の対象になっている。かつて中川久定は,『百科全書』内の日本への言及を分析し,18世紀フランスの啓蒙思想家の言説では,欧州内部の宗教や政治体制を批判するために,遠く直接の国交のなかった日本が鑑として用いられるようになったことを指摘した。『レ・ジャマボ』のようなほぼ無名の文士の作品においてもそれは例外ではない。本研究は,人文科学研究所蔵の中川文庫と,ヌーシャテル公立大学図書館蔵のSTN関連資料を活用しながら,この『レ・ジャマボ』の位置付けを歴史的な視座から試みるものである。
収録刊行物
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- 人文學報
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人文學報 121 93-117, 2023-06-20
京都大學人文科學研究所
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390297847284598272
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- NII書誌ID
- AN00122934
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- DOI
- 10.14989/284442
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- HANDLE
- 2433/284442
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- NDL書誌ID
- 032938711
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- ISSN
- 04490274
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- NDL
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可