FFAR1シグナルはモノアミン遊離を調節することで情動行動に影響を与える

  • 栗原 崇
    鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 生体情報薬理学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Possible involvement of FFAR1 signaling in mouse emotional behaviors through the regulation of brain monoamine releases

抄録

<p>FFAR1(free fatty acid receptor 1)は遊離中/長鎖脂肪酸を内因性リガンドとするGタンパク質共役型受容体である.FFAR1は中枢神経系にも広く発現することが発見当初から示唆されていたが,その機能に関しては今なお不明な点が多い.最近徳山らの研究グループは,視床下部,青斑核,縫線核等に存在するFFAR1が,オピオイド-モノアミン系を賦活することで鎮痛作用をもたらすことを見出した.一方,著者らは,一次知覚神経節や脊髄後角神経細胞にFFAR1が存在し,炎症や末梢神経障害に伴いFFAR1タンパク質発現レベルが上昇すること,FFAR1作動薬の脊髄クモ膜下腔投与は,炎症性疼痛および末梢神経障害性疼痛モデルマウスに鎮痛作用を示すことから,FFAR1は鎮痛薬開発の良い標的となりうることを報告した.そこで著者らは,FFAR1のさらなる中枢神経機能に迫るため,FFAR1作動薬(GW9508),FFAR1拮抗薬(GW1100)およびFFAR1遺伝子欠損マウスを用い,内因性疼痛調節機構およびうつ様行動におけるFFAR1の機能的関与について検討を行った.その結果,FFAR1欠損マウスは炎症性・末梢神経障害性疼痛様行動およびうつ様行動を強く呈すること,特に末梢神経障害性疼痛に伴ううつ様行動は,イミプラミン非感受性であった.次に我々は,in vivoマイクロダイアリシス法を用い,FFAR1が脳内モノアミン(ドパミン,セロトニン)遊離に実際関与するのか検討を行ったところ,FFAR1はセロトニン遊離を促すことによって間接的にドパミン遊離を調節するメカニズムの存在が示唆された.現在我々は,コカインやモルヒネなどの依存性薬物に対する行動変化にFFAR1はどのように関与するか,検討を行っているところであるが,本特集ではコカイン投与による移所運動促進効果を取り上げ,考察する.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 158 (6), 454-459, 2023-11-01

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (12)*注記

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