西日本諸方言におけるアスペクト形式の文法化-2つの動機に基づく待遇化プロセス-

書誌事項

タイトル別名
  • Grammaticalization of Aspect Form s in Western Japanese :The Process of Politeness Based on Two Motives

抄録

文法化の一方向性より,より低い階層にある語彙的要素は,より高い階層にある文法的要素に変化するということは自明である。一方,文法化はなぜ生じるのかという問題については研究が少ない。中国語の持続形式「着(ZHE)」は,事実確認を標示するムード形式に文法化している(沈 2008)。また,西日本諸方言の持続形式「ヨル(-jor-)」も,証拠性を標示するムード形式に文法化している(工藤 2014)。これらのムード化は,TAMの階層構造に基づけば,順当な文法化であると言える。しかし,近畿中央方言の持続形式「ヨル(-jor-)」は,卑罵性を標示する待遇形式に文法化している(井上 1998)。ここで,なぜ近畿中央方言では,ムード化ではなく待遇化が生じたのかという問題が生じる。本研究では,持続形式の待遇化は,①形式の機能重複,②形式のランキング,という2つの動機に基づいて生じるという仮説を提案する。また,文法化の動機の相違によって文法化の内容が分岐するという可能性について考える。

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