低温プラズマおよびハイパーサーミア併用効果を用いたがん治療の可能性

  • 近藤 隆
    名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター
  • 橋爪 博司
    名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター
  • 田中 宏昌
    名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター
  • 石川 健治
    名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター
  • 齋藤 淳一
    富山大学学術研究部医学系,放射線診断・治療学講座,放射線腫瘍学部門
  • 堀 勝
    名古屋大学 低温プラズマ科学研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • The Possibility of Cancer Therapy with a Combination of Low-temperature Plasma and Hyperthermia

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説明

<p> プラズマは固体・液体・気体に続く物質の第4の状態である.狭義のプラズマは,気体を構成する分子が電離し,陽イオンと電子に分かれて運動している状態であり,電離気体に相当する.いわゆる熱プラズマはすでに消化管や鼻腔表面の組織凝固壊死を誘導する熱凝固装置治療に使われている.近年,低温プラズマ技術の発展が目覚ましく,止血,がん治療,遺伝子・薬物導入,殺菌・滅菌,創傷治療等,多くの医療分野への利用が注目されている.低温大気圧プラズマは水溶液中には多量の活性種を生成する.但し,直接照射の場合の課題はその深達性にある.そこで,我々はハイパーサーミアの併用により大気圧プラズマ誘発活性種がより多く細胞内に導入されることを期待してアポトーシスを指標にその増強効果を検討した.</p><p> 実験にはヒトリンパ腫細胞株であるU937細胞を用いた.プラズマにはHeプラズマを用いた.その結果,単独では細胞致死効果を示さない42 ℃の温熱処理を付加することでプラズマ併用により相乗的なアポトーシスの増強効果が得られた.同時に細胞内活性酸素種も増加した.単独では致死効果が十分でない場合でもハイパーサーミアを付加することで細胞内への活性酸素種の導入が増え,致死効果の増強に寄与したものと思われる.</p><p> 最近,プラズマ照射された溶液の生物作用が注目されている.プラズマ活性培養液やプラズマ活性乳酸リンゲル液のがん細胞致死効果が注目されている.これらプラズマ活性化溶液と温熱処理は細胞内に酸化ストレス誘導をすることが知られており,ハイパーサーミアとの併用による相乗効果が期待される.本稿ではプラズマを用いたがん治療の現状について解説するともにハイパーサーミア併用の有用性について言及する.</p>

収録刊行物

  • Thermal Medicine

    Thermal Medicine 39 (3), 21-30, 2023-09-30

    日本ハイパーサーミア学会

参考文献 (29)*注記

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