白亜紀海水の炭酸系と海洋の石灰化生物への影響

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  • Carbonate saturation state in Cretaceous seawater and its effect on marine calcifiers

抄録

<p>大気に放出され、海洋に移行したCO2によって海洋の酸性化が進行している。海洋にアルカリ物質を添加して酸性化した海水を中和し、さらに海水のCO2吸収能力を増進する「海洋アルカリ度増進技術」が注目されている。海外では、海洋に各種の石灰を散布したり、CO2反応性の高いカンラン石などを海岸に撒いたりする方策が検討されているが、国内での認知度は低い。海洋アルカリ増進技術の実効性は、地球史の気候変遷研究からも支持される。地球は、約1億年前の白亜紀にも類似の環境を経験していた。大気CO2分圧(pCO2)は1000 µatm以上でありながら、海洋には石灰質プランクトンが繁栄した。これは、海水の全アルカリ度が現在よりも高く、海水の炭酸塩飽和度が現在と同程度に維持されていたからと考えられている。この仮説を、造礁性サンゴの初期ポリプを用いた飼育実験系で検証することを試みた。高アルカリ度の白亜紀の炭酸系を模倣した海水を調製して、コユビミドリイシ(Acropora digitifera)の初期ポリプを飼育し、石灰化量及び生残率を計測した(高アルカリ度・高pCO2)。合わせて、将来の海洋酸性化状況を模した現代海水の実験区(低アルカリ度・高pCO2)、白亜紀の海水を現在のpCO2の下で平衡化させた実験区(高アルカリ度・低pCO2)、そして対照区(現代の表層海水:低アルカリ度・低pCO2)を設定した。白亜紀海水の炭酸塩飽和度は、対照区と同程度に設定された。約1ヶ月のポリプ飼育により、実験区ごとに石灰化量及び生残率に顕著な違いみられた。白亜紀海水の実験区は、対照区とほぼ同程度の石灰化速度を示した。高アルカリ度・低pCO2区では、4つの実験区で最大の石灰化量を示し、低アルカリ度・低pCO2区では最小であった。この結果は、海水の炭酸飽和度が石灰化に重要なパラメータであることを確認するとともに、海洋酸性化の石灰化阻害効果が、全アルカリ度の増進により緩和される可能性が示唆される。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298355906168192
  • DOI
    10.14862/geochemproc.70.0_67
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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