片側性唇顎口蓋裂患者における上顎前方牽引装置の長期的経過観察

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  • Long-term Observation of Maxillary Protraction Appliance Therapy in Patients with Unilateral Cleft Lip and Palate

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抄録

【目的】片側性唇顎口蓋裂(UCLP)患者では口蓋形成術の外科的侵襲や術後の瘢痕収縮により上顎歯列弓幅径の狭窄や上顎劣成長が惹起され,骨格性下顎前突が生じる。そのため第1期治療にて上顎前方牽引装置が用いられることが多い。しかしながら,上顎前方牽引装置の短期的効果についての報告はあるものの,長期的効果について報告しているものは少ない。今回我々は一段階口蓋形成術を行ったUCLP患者で,MPA治療開始時(T0)とMPA治療終了時(T1),永久歯萌出完了時(T2)のセファロ分析を用いて上顎前方牽引装置の長期的効果について比較検討を行ったので報告する。 <br>【方法】1981年1月から2020年2月に東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科に来院したUCLP患者のうち,初診時McNamara line to Point A≦0mm,マイナスのOverjetを呈し,上顎劣成長による骨格性下顎前突と診断され,上顎前方牽引装置(MPA)にて治療を行った患者に対してMPA治療開始前,MPA治療終了後,永久歯萌出完了時の側面頭部エックス線写真を用いて後向きコホート研究を実施し比較研究を行った。対照群は唇顎口蓋裂を伴わない上顎劣成長による骨格性下顎前突患者で第1期治療にてMPAを1年以上使用したものとした。 <br>【結果】UCLP群における骨格系の項目では,McNamara line to point AはT1とT2の値を比較すると有意に減少した。SNB angleは,T1とT2およびT0とT2の値を比較すると有意に増加した。ANB angleはT1とT2,ConvexityはT1とT2およびT0とT2の値を比較するといずれも有意に減少し,顎間関係は増悪した。 <br>【結論】片側性唇顎口蓋裂患者は上顎前方牽引装置を使用することにより,Overjetは増加するものの上顎骨前方成長効果が乏しく,長期的な観察の結果,上顎骨の劣成長および骨格性下顎前突の改善が見込めないことが示唆された。

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