西日本における落枝生変形菌の種多様性と森林タイプとの関係

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タイトル別名
  • The relationship between species diversity of myxomycetes on litter twigs and forest vegetation types in western Japan

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抄録

変形菌の多くは森林の枯死木や落葉・落枝などの腐植で生活するが,森林タイプの違いがどのように変形菌群集に影響を与えているのかは十分に分かっていない.落枝は変形菌にとって生態的なニッチになっているため,森林の優占種の落枝で生育する変形菌(落枝生変形菌)の分布を異なる森林タイプ間で比較した.調査地は,西日本の中国・四国地方に立地する6 つの異なる森林タイプ(3 つの天然林と3 つの里山林)を選定し,それぞれの落枝生変形菌群集の類似性,および天然林と里山林との比較をした.森林ごとに採取した優占樹種の落枝を全体で640 枚のペトリ皿で湿室培養し,発生した変形菌子実体コロニーの数と出現種を記録した.出現種は全体で19 属42 種であったが,6 つの森林タイプに共通して出現したのは4 種のみであった.天然林の常緑広葉樹林で21 種が出現し,種多様性が最も高くなった.一方,里山のアカマツ林では7 種しか出現しないなど,里山林では種多様性が低下した.非計量多次元尺度構成法で変形菌群集を序列化すると,地理的に近接する森林間では類似性が高いが,森林タイプにより個別の群集構造を形成した.本研究では,西日本の森林タイプの違いによる落枝生変形菌の分布パターンが明らかになり,人間活動の影響を受けた里山林で変形菌の多様性が低下していることが分かった.

収録刊行物

  • ヒコビア

    ヒコビア 18 (4), 231-243, 2022-12-28

    ヒコビア会

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