ルネサンス期人文主義者の教育言説における体罰と規律の諸相

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  • Discipline and Corporal Punishment in the Pedagogical Treaties of Renaissance Humanism
  • ルネサンスキ ジンブン シュギシャ ノ キョウイク ゲンセツ ニ オケル タイバツ ト キリツ ノ ショソウ

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抄録

本稿の目的は,ルネサンス期の人文主義者による教育と体罰の議論を再検討することにある。先行研究の多くは,その教育思想の歴史的な意義を,愛情を重視し体罰に反対したものと高く評価してきた。しかし,その著作には,体罰への批判とともにその容認を示唆する記述も散見される。そうした両義性はどのように理解されるべきだろうか。 本稿は,人文主義者の著作を,古典古代とキリスト教思想という体罰に異なる価値を与えた言説の受容から検討した。帝政期ローマの著述家は,自由人の教育における暴力に否定的な見解を示したが,他方で規律においてはその必要性を認めていた。ヘブライ語聖書に由来する体罰を推奨する章句とその注釈をもとに,中世の知識人たちは教育における鞭打ちの意義を多様に論じた。人文主義者たちはこれらの言説を解釈することで体罰の濫用への反対を提示した。しかしその見解は,必ずしも規律における打擲を否定したものではなかった。子どもの本性と習慣を矯正するためには,体罰は依然として必要なものと考えられていたのである。古代の言説を解釈した人文主義者の議論は,規律と体罰を結びつける様式をあらためて定式化したものといえるだろう。

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