水の安定同位体分析を通して見えてきた熊本地域における地下水流動機構の空間特性ならびにその季節変動

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タイトル別名
  • Spatial characteristics of groundwater flow mechanisms and their seasonal variations in Kumamoto area revealed by stable isotope analysis of water

抄録

<p>本研究地域である熊本地域では、近年地下水の揚水に伴う水位の低下や、硝酸性窒素汚染を例とした水質の汚染が問題視されている。地下水が古くから人々の生活と結びついており、現在水道水源のほぼ100%を地下水で賄っている本地域において、地下水における様々な課題の改善が喫緊の課題となっている。本地域の地下水流動に関する先行研究では、地下水位の測定や水理地質の測定をはじめとして様々な研究が行われてきたが、大津菊陽地域等の涵養域での解析が進んでおらず地下水系全体の理解に対し問題が残っていた。本研究では複数の自治体及び企業の協力が得られたため、先行研究よりも網羅的な採水が可能となった。そのため、地下水が人々の生活と密接に結びついている本地域において、地下水流動の広域かつ詳細な把握を目標とし、入手した地下水試料について水素・酸素安定同位体の分析を行った。また、分析の結果得られた流動機構の特徴を踏まえた上で13地点を選定し、2022年4月以降月毎に同位体分析を継続しており、これら試料を用いて流動機構の季節変動について検討を行った。</p><p>本研究において先行研究よりも広範囲かつ高い密度で採水し、分析した結果以下のことが明らかとなった。</p><p>1) 熊本地域における多くの地下水試料中の水素・酸素安定同位体組成は、夏季天水線と冬季天水線の間にプロットされており、夏季の降水と冬季の降水がよく混合した状態である。</p><p>2) 水素・酸素安定同位体分析結果を地図上にプロットしたところ、白川を挟んで南北で大きく同位体比組成が異なり、地下水供給源の違いを示している。</p><p>3) 本地域における先行研究で指摘されていた、地下水試料のd-excess値が広い範囲で確認される原因は、台地部に主に分布する涵養される際に蒸発の影響を受けた地下水と、阿蘇西麓地域に主に分布する蒸発の影響をあまり受けずに涵養された地下水が原因となっている可能性がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390298668092526592
  • DOI
    10.11520/jshwr.36.0_374
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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