クラリスロマイシン併用がエプレレノン/エサキセレノンによるカリウム上昇作用に及ぼす影響:観察研究

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抄録

<p>【目的】ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のエプレレノン/エサキセレノンは、アルドステロンを介した遠位尿細管の水・Na再吸収ならびにK分泌を阻害することで用量依存的に高K血症を惹起し、いずれも薬物代謝酵素シトクロムP450 3A4(CYP3A4)にて代謝される。我々は、強力なCYP3A4阻害薬クラリスロマイシン(CAM)併用がMRAによるK上昇作用に及ぼす影響を解析した。</p><p>【方法】三重大学医学部附属病院にて2010年1月から2022年2月の間にエプレレノン/エサキセレノンを導入した高血圧症例を対象に後ろ向き観察研究を実施し、傾向スコアマッチング法にて背景を調整した単剤群とCAM併用群を選定した。主要評価項目は血清K値と定義し、治療後の推移(Wilcoxon signed-rank sum test)とΔK(=最大値-開始時)の群間比較(Mann-Whitney U test)を実施した。次に、CAM併用群を対象にΔKに影響を及ぼす要因を線形相関分析にて探索した。</p><p>【結果・考察】各群9名ずつを解析対象とした。単剤群治療後の血清K値は、4.3 [4.0 to 4.7] meq/Lから4.6 [4.4 to 5.2] meq/Lへ有意に上昇した(p=0.0469)。同様に、CAM併用群治療後の血清K値も4.3 [3.5 to 5.1] meq/Lから4.9 [4.0 to 5.5] meq/Lへの有意な上昇を認めた(p=0.0234)。ΔK は有意差を認めなかった(単剤群: 0.3 [0.1 to 1.2] meq/L vs. CAM併用群: 0.5 [0.1 to 1.1] meq/L, p=0.7231)。さらに個々のMRAにて解析したところ、エサキセレノン群のΔKはCAM併用群にて有意に高かったのに対して(単剤群: 0.1 [0.1 to 0.2] meq/L vs. CAM併用群: 0.6 [0.5 to 1.1] meq/L, p=0.0495)、エプレレノン群では有意差を認めなかった(単剤群: 0.8 [0.1 to 1.3] meq/L vs. CAM併用群: 0.4 [-0.2 to 1.2] meq/L, p=0.5745)。ΔKと年齢は有意に相関したが(y=0.03x-1.38, r=0.71, p=0.0336)、その他の背景とは有意な相関を認めなかった。エサキセレノンはミネラルコルチコイド受容体の高い親和性と長い半減期を有するため、CAMによるCYP3A4のMechanism-based inhibitionを強く受け、その結果Kが容易に上昇することが考えられた。加齢に伴うCYP3A4活性ならびに臓器機能の低下が本薬物相互作用を増強させることが示唆された。</p><p>【結論】CAM併用がMRAのK上昇作用に及ぼす影響はエサキセレノンにおいて顕著であった。</p><p>【参考文献】T Hirai et al. J Hypertens. 2023;41:580-586.</p>

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  • CRID
    1390298742739264128
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.44.0_1-c-p-c3
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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